あなたも、跳び箱が跳べないと悩んでいる子供や生徒に、どうにか跳べるようにしてあげたいと思っていませんか?
・なんでうちの子は跳び箱が跳べないのだろう?
・どうやったら跳び箱が跳べるようになるのかな?(簡単な方法やコツはないのか)
などと、すぐに結果の出る方法や簡単なコツといったものがないかと、お探し中かもしれませんね。
子供が跳び箱を跳べないのは「技術的な問題なのか?」「精神的な問題なのか?」と、いろんな理由を考えてしまいますよね。
跳び箱が苦手な子供の、跳べない最大の理由が「恐怖心があって跳べない」ということです。
・跳び箱が大きくてぶつかりそうで怖い
・そもそも運動が苦手な自分には無理だし、跳ぶのが怖い
など、跳び箱への恐怖心が出てくる理由は様々です。
跳び箱を跳べるようにするには、そんな恐怖心の克服と技術的な問題も含めて、解決していく必要があります。
今回は、跳び箱に対する恐怖心を取り除いてあげるための方法と、上達するための弊害になることが多い5つの技術的なポイントを改善する方法のご紹介。
そして、そのポイントを踏まえて、跳べるようにするためのコツを掴ませる練習法についてご紹介していきます。
この練習法でコツを掴ませてあげれば、跳び箱を跳べなかった子供が、早い子で1時間もあれば跳べるようにさせてあげられますよ!
※あくまでも子供によって個人差がありますので、跳べるまでに2、3時間~1日ぐらいはかかる子供もいますが、ほとんどの子供が1日でコツを掴んで跳べるようになるでしょう。
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1.恐怖心を取り除くためにまずは跳び箱に慣れさせよう
恐怖心があって跳べないという子供は、跳び箱の手前で止まってしまい、たぶん跳び箱の上にも乗れない可能性が高いでしょう。
この「恐怖心」を取り除くためには、まずは跳び箱を跳ぶことよりも、跳び箱というものに慣れさせることから始めていきます。
こういう子供に関しては、あまり焦らずに少し時間をかけて、次のような練習をやってみるのがコツです。
1-1.馬跳びをさせて跳び越える動作に慣れさせる
まず、跳び箱を跳ぶことに恐怖心を感じている子供は、ほとんどの場合が跳び箱という物体そのものに怖いと感じてしまっています。
そんな時は、補助者の人(親か先生)が小さな馬になってあげて「馬跳び」をさせてあげます。
跳び箱の基本型は「馬跳び」です。
馬跳びをおこなうことで、跳び箱に対する恐怖心を取り除くことと、跳び箱を跳び越える時のコツを身に付けさせることができます。
また、馬跳びであれば跳び箱自体を使用しないため、お父さんやお母さんなど家族の誰かが馬となることで、学校以外(自宅や公園など)でも手軽に練習することができますよね。
・最初のうちはあまり高くせずに、なるべく低い姿勢の馬で跳ばせてあげる
(慣れてきたら少しずつ高さを上げていって、恐怖心を取り除いていく)
・馬役の相手がいない場合に、代用できるものなどがあればそれを使用してもよい
(公園にあるタイヤの遊具やマットを折りたたんだものを使うなど)
馬跳びを跳び越えさせる動作を、なるべくたくさん繰り返しさせてください。
だんだんと恐怖心も抜けていって、跳び越えるためのコツが掴めてくるはずです。
1-2.ロイター板無しで低い跳び箱を跳ばせる
次に実際の跳び箱を跳び越えることへの恐怖心を、取り除いていくことにしましょう。
今回は、跳び箱を跳ぶことではなく慣れることが目的のため、ロイター板は使用せずに、
とにかく跳び箱の上に乗る・跳ぶ・またがるなどして、遊び感覚で練習していくのがコツです。
なるべく恐怖心が出ないように、跳び箱とたわむれるような気持ちで、楽しくなるような練習環境を作ってあげることも大切です。
(1つ1つの行動に対して褒めてあげることを忘れず、子供のモチベーションを上げる)
・跳び箱は1段目だけを使用する
(子供の身長やレベルに合わせて、2段目か3段目までは使用してもよい)
・ロイター板は使用しない
・助走をつける必要はない
(その場で跳び箱に乗ることや跳ぶことを楽しむため。1mぐらいの軽い助走はよい)
なるべく1人でやらせた方がいいですが、サポートが必要な場合は、上の画像のように補助者が支えるように跳ばしてあげてください。
1-3.補助者が手を繋いでロイター板までの助走の流れを導いてあげる
ここからはロイター板も使用して、ある程度本格的な練習です。
跳ぶことに対する恐怖心はほとんど無くなったと思いますが、最後の恐怖心克服として、助走をとって跳び箱まで走り、ロイター板を踏み切ることへの恐怖心があります。
跳び箱において、助走で勢いをつけて跳ぶことはとても重要で、助走に対する恐怖心があると跳び箱を跳ぶ直前に減速してしまい、怖さから立ち止まってしまいます。
その状態がずっと続いてしまうようでは、いつまで経っても跳ぶことはできません。
改善するためには、助走の時に補助者が手を取って寄り添ってあげながら、ロイター板を踏ませてあげるのです。
・補助者は子供の横に立ち、手を繋いでロイター板まで一緒に並走しましょう
(立ち位置は、左側でも右側でもどちらでも構いません)
・ロイター板の前まで来たら、ロイター板を両足で勢いよく踏み切らせてジャンプさせます
・これを何度も繰り返し、助走からのジャンプする感覚を掴ませてあげる
・ジャンプするだけなので跳び箱は使いませんが、恐怖心克服のために置いても大丈夫
(跳び箱があったほうが、より助走から跳ぶまでの感覚を掴みやすいため)
子供の手を取って並走しながら、助走に対する恐怖心を克服させてあげ、ロイター板を両足でしっかりと踏み切る感覚を掴ませてあげるのがコツですよ。
1-4.跳び箱にぶつかったら痛いという恐怖心を柔らかい跳び箱で克服
跳び箱そのものが怖いという子供の中には、もし跳び箱にぶつかったら硬くて痛そうだから跳ぶのが怖いという恐怖心もありますよね。
そういう子供の場合は、練習してどうこうなるという問題でもないため、アイテムを使って跳び箱に対する恐怖心を克服するしかありません。
跳び箱の中には、痛さに対する怖さを無くすために、クッション性のある柔らかい素材で作られた種類があります。
柔らかい素材の跳び箱を使って「跳び箱は痛くないし、怖くないんだよ!」と、子供に思い込ませてあげるというのがコツですよ。
クッション性のある柔らかい素材で作られた跳び箱であれば、ぶつかっても全く痛くないため、安心して跳べますよね。
ただし、価格的に5万円~10万円ぐらいはするものですから自宅で手軽にというわけにはいかず、基本的に学校や施設等での使用になるでしょう。
2.跳べない理由として多い5つの技術的ポイントを改善しよう
第1章の練習で恐怖心は克服できた、もしくは元々恐怖心は無いけどなかなか上達できないという子供には、跳び箱を跳べない理由になることが多い、5つの技術的ポイントを意識しながら練習していきます。
*跳べない理由として多いのが……
・助走が短すぎる(助走スピードが足りない)
・ロイター板の踏み切りが弱い
・跳ぶ時の手をつく位置が悪い
・腕を支点とした体重移動ができていない
・リズム感が無く一連の動作をスムーズにおこなえない
などの、主にこの5つが原因としてあげられるでしょう。
ここからは、それぞれのポイントを細かく見ていくことにしましょう。
2-1.助走が短すぎる(助走スピードが足りない)
跳び箱を跳ぶ上で重要になる部分は何かと問われると、
その大半が……
「助走を勢いよく取れているかどうかで決まる」
と言っても過言ではありません。
しっかりとトップスピードで走って、勢いを付けられなければ、跳び箱を跳ぶための力は得られないのです。
しかし、多くの跳べない子供は、助走のスピードが足りないことや助走距離が短すぎて勢いがつけられていない場合がほとんどです。
跳び箱を跳ぶ位置までに、助走でトップスピードに入れるぐらいの距離は確保しておきましょう。
(最初のうちは、10mぐらいの助走距離を取っておくのがベストです)
2-2.ロイター板の踏み切りが弱い
ロイター板の踏み切りが弱いと、当然ながら高く跳べませんし、跳び箱を越えることもできません。
しっかりと跳び箱の奥で手をついて跳び越えるためにも、強く踏み切って高く跳ぶことを意識しておくのがコツです。
しっかりとロイター板の反動を活かせるポイントで、踏み切るようにしましょう。
ロイター板を踏み切るポイントに、目立つ色を使って目印(線やマークなど)を付けておくと効果的です。
足の中央(つちふまずの辺り)が、目印の線にかかるポイントで踏み切ると、反動を活かして跳ぶことができるでしょう。
2-3.跳ぶ時の手をつく位置が悪い
せっかく助走をつけて、ロイター板を強く踏むことできても、跳び箱に手をつく位置が悪くては駄目です。
できるだけ、跳び箱の奥に手をつくのがコツとなります。
また、手をつく時は必ず手を開いて、じゃんけんのパーの状態にしておくのもコツの1つです。
手をちゃんと開かないで跳び箱に手をついてしまうと、力が入りづらくなり、しっかりと腕の力で体を前に運んであげることができないからです。
(上の画像のように跳び箱の奥にテープで目印をつける) その目印めがけて手をつくことで、跳び箱の奥側で手をつけるようになってきます。
2-4.腕を支点とした体重移動ができていない
跳び箱がうまく跳べないという子供の多くが、
【腕を支点とした体重移動ができていない】
という動きに悩まされます。
手をついた腕の位置と肩の位置関係を比べた時に、跳べない子は支点の腕よりも肩が前に出ていないことが多いです。
跳び箱が跳べる子というのは、支点の腕よりも肩がしっかりと前に出ています。
最初は怖さがあるかもしれませんが、支点の腕よりも前に肩を出すためには、跳び箱に手をついたらしっかりと上体が前に乗り出すように跳ぶのがコツですよ。
※下の画像のようなスタイルになります
これは、跳ぶ瞬間に恐怖心が出てしまい、自然と腕でブレーキをかけてしまっているからです。
跳び箱を跳べるようになるには、腕の支点から上体をしっかりと前に出して跳ぶことが、上達のカギになってきます。
最初は少し怖さもあるでしょうが、着地点のマットに体ごと飛び込むような気持ちで、上体を前に出してみましょう。
子供が上体を前に出しやすくするためと、安全対策・恐怖心軽減のために、着地点のマットを分厚いものにしておくといいですよ!
2-5.リズム感が無く一連の動作をスムーズにおこなえない
跳ぶための一連の動作がスムーズにおこなえない子供は、跳び箱をすぐに跳ぶことはちょっと難しいでしょう。
おそらくこのような子供は、リズム感が必要になってくる運動も苦手な可能性があります。
跳び箱もリズム運動の1つだと言えます。
跳び箱というのは、ロイター板を踏んで、跳び箱に手をつき、最後は跳び越えて着地するという一連の流れで跳ぶものです。
リズムでいうと「トン(ロイター板を踏む)トン(跳び箱に手をつく)パッ(着地する)」という感じでしょうか。
跳び箱は、この一連の流れでリズムよく跳ぶのがコツです。
しかし、リズム感があまりない子供は、この一連の流れで跳ぶというのが苦手なため、跳び箱を跳べるようになる前に、リズム感を養う練習が必要になってきます。
*例えばそういう子には……
昔から遊びの1つとしてある「ケンパー」でリズム感を養います。
「ケンパー」とは地面にいくつかの円を描いて、「ケン・パッ・ケン・パッ・ケン・ケン・パッ」というように円の中を片足や両足で踏んでいく遊びです。
この「ケンパー」で、リズム感を養う練習をおこなってみてください。
友達や親子で、楽しみながら遊び感覚でおこなうのが一番です。
跳び箱だけに限らず、リズム感はいろいろな運動に応用できるため、同時に鍛えておくと後々他のことにも役立ちます!
3.向山式跳び箱練習法で跳び箱が1日で跳べるようになる
ここからは、第2章の5つのポイントを踏まえて、跳び箱が跳べない子でも1日で跳べるようにしていきます。
研究団体「教育技術法則化運動」(TOSS)の代表である「向山洋一」氏の、誰でも跳べるようになる跳び箱練習法という方法があり、ここではその練習方法についてご紹介していこうと思います。
この方法でコツを掴みながら練習していけば、跳び箱の基本である開脚跳びが誰でもマスターできるでしょう。
この練習法には……
・A式練習法(跳び箱の基礎練習)
・B式練習法(跳び箱を自然な流れで跳べるようになる練習)
という2段階の練習方法に分かれています。
必ず最初にA式をおこない、A式が確実に身についてからB式に進むようにしてください。
A式の練習→A式の習得→B式の練習→開脚跳びのマスター
3-1.跳び箱練習法A式
このA式では、跳び箱の基本動作である「腕を支点とした体重の移動」を体感させ、コツを掴んでもらうための練習です。
簡単に言えば、跳び箱にまたがった状態になって、手をついて前に移動するコツを掴ませるためのものになります。
腕に体重を乗せて、重心が前に移動している感覚を覚えさせましょう。
【跳び箱練習法A式】
①子供を跳び箱の上にまたいで座らせます
(最初はなるべく前の方に座らせましょう)
↓
②跳び箱の端に手をついてお尻を上げて、跳び箱の前方に跳び降ろさせます
↓
③その時に、体重が腕にかかるようにゆっくり行わせます
↓
④通常30分~1時間ほどおこなえば、上手にできるようになります
(上手くできない時は、できるようになるまで繰り返し練習しましょう)
例えば、小学校3年生は跳び箱3段を使用します。
もしこの練習法を自宅などでおこなう場合は、跳び箱は無いため、自宅にある何か四角くて丈夫な箱を用意するか、家族の中で体の大きい人に四つん這いになってもらう(馬跳びの要領)などで練習してみましょう。
また、公園などにあるタイヤや丸太型の遊具などを使用して、練習するのも良い方法です。
3-2.跳び箱練習法B式
A式の練習だけでは、まだ跳び箱を跳べるようにはなっていません。
これから説明するB式をやってこそ、A式の練習が活かされるのです。
そもそも跳び箱を跳ぶというのは、次のような一連の動作になります。
助走→踏み切り→手をつく(体重移動)→着地
跳び箱を跳ぶには、これらの一連の動作が上手く流れないと跳ぶことはできません。
体重の移動と着地という終盤部分をA式の練習でおこなっているため、そこにつなげていくためのコツを掴む練習がB式というわけです。
それではB式の練習法をおこなっていきましょう。
しかし、このB式の練習法は子供1人ではできません。
練習するには補助者が必要で、しかも多少の力と技術が必要なため、先生やお父さんなど、大人の男性が手伝ってあげてください。
【跳び箱練習法B式】(補助の仕方)
①補助者は跳び箱の横に立ちます
(補助者が右利きなら子供が右から助走してくるように立つ)
↓
②子供は跳び箱の2~3m手前から助走させます
↓
③跳び箱の手前で、跳んだ子供の腕を補助者は左手で掴み、右手を子供のお尻の下に入れて支えながら、お尻を前に送って跳び箱を跳ばせます
↓
④何回かやっている内に、補助者の手にかかる体重が軽くなってきます
↓
⑤子供が1人で跳べそうだなと感じたら、補助者はサッと手を引きます
↓
⑥このB式を通常30分~1時間ほどおこなうと、子供は補助なしで跳べるようになります
(上手くできない時は、できるようになるまで繰り返し練習しましょう)
※跳び箱練習法B式の注意点
・子供の体重が重くて片手で支えきれない場合は両手で行います
・助走を最初から長くしないように気を付ける
(最初は1、2歩の助走で十分です)
・両足を揃えてロイター板をしっかりと踏み切らせよう
・跳び箱の上に跳び乗るぐらいの勢いで手をつかせましょう
(できるだけ跳び箱の前方につくことを意識させる)
・補助者は子供が跳ぶ度に、必ず「上手い!」など声をかけてあげよう
・少し大げさなぐらい褒めてあげてください
4.<まとめ>
この記事を読んだあなたは、今現在跳び箱を跳べないお子さんが「そんな簡単に跳び箱が跳べるわけがない!」と思うかもしれません。
それでもやっぱりお子さんを、跳び箱が跳べるようさせてあげたくないですか?
本当に跳べるようになるのか疑ってしまうかもしれませんが、騙されたと思って一度「跳び箱を跳べるようになるためのコツ」にチャレンジさせてみてください!
今まで跳び箱が跳べなかったお子さんが、みるみるうちにコツを掴んでいつの間にか跳べるようになっていきますよ!
そして、あなたのお子さんが跳べるようになり、そのまま跳び箱を好きになってもらえるとありがたいですね。
【参考書籍】
・下山真二『日本で一番わかりやすい体育の本 跳び箱ができる!自転車に乗れる!』池田書店、2006
・向山洋一、下山真二『小学校の苦手な体育を1週間で攻略する本』PHP研究所、1996