あなたも「骨端線を損傷すると身長が伸びなくなってしまう」などという話を、聞いたことがあるかもしれません。
「その話って本当なのかしら?」と、あなたも疑問に思っているかもしれませんね。
「子供の身長が伸びるには骨端線が閉じていないことが重要だ」と聞いたことがあるけれど、骨端線が損傷したら子供の身長が伸びなくなるのではと、不安になっていることでしょう。
実際に、骨端線が損傷することによって、身長が伸びることなど子供の身体的な成長に影響を与えてしまうことがあります。
主に18歳ぐらいまでの子供の骨に存在している成長軟骨(骨端軟骨)のことで、この部分が成長することによって、身長が伸びていくと言われています。
それぞれの目安は、
・男子は17~18歳ぐらいまで
・女子は15~16歳ぐらいまで
骨端線が残るとされており、個人差はありますがこの線が閉じてしまう(大人の骨になってしまう)と、これ以上身長が伸びる可能性はほぼ無くなると言われています。
※成長速度によっては、目安の年齢よりも遅くなる場合もあれば、早まる場合もある
今回は「骨端線が損傷することで子供の成長にどう影響を与えてしまうのか」について。
また「どういう行動で骨端線が損傷してしまうのか」や「骨端線が損傷してしまうことによって発症する主な怪我」などについても、ご紹介していきたいと思います。
目次
1.骨端線の損傷とはどういう症状なのか
結論から言うと、子供だからといってすべての子が骨端線を損傷してしまうわけではありません。
通常の怪我と一緒で、体に何らかの刺激が加わらない限り、骨端線を損傷することはないです。
骨端線の損傷とは、いわゆる「子供特有の骨折の一種」になります。
ただし、通常の骨折とはちょっと意味合いが違います。
・通常の骨折は・・・実際に骨自体が折れたり傷ついたりすること
・骨端線損傷は・・・骨端軟骨がずれて削れるようなイメージ
身近な怪我でいうと、突き指やねんざなども骨端線損傷の一部になります。
正確にいうと違う怪我になるのですが、子供に関してはこの突き指やねんざが重症化していると、骨端線を損傷している場合があるのです。
そもそも子供が18歳になるころまで(骨の成長速度によって個人差はあります)は、全身の骨に骨端線が存在します。
主に体重がかかりやすい足の骨端線を損傷することが多いですが、他の骨(頭・腕・手など)も強い衝撃を受けることで、全身にある骨端線が損傷する場合もあるのです。
1-1.骨端線の損傷は全身どこの骨でも発症の可能性がある
先ほど少しお話したように、骨端線は子供の体にある全身どこの骨にも存在します。
骨端線を損傷しやすい足の骨以外にも・・・
・頭の骨(頭蓋骨)
・腕、手、指の骨
・すねの骨や太ももを含めた脚の骨
・肋骨や腰の上半身の骨
など、子供の体が成長していく段階の骨には、必ず骨端線があります。
ただし、太ももの骨や肋骨や腰の上半身の骨に関しては、骨を覆う筋肉が他の部位より大きいため、骨端線を損傷してしまうほどの衝撃を受けることが少ないです。
筋肉が大きくて、骨も太い肋骨や太ももなどの骨端線が損傷するほど強い衝撃であれば、骨端線が損傷する以前に、骨自体が骨折してしまう可能性が高いでしょう。
1-2.骨端線(骨端軟骨)はとても柔らかい軟骨である
骨端線と言われている骨端軟骨は、関節を守るクッションである通常の軟骨よりも柔らかいです。
そのため、激しい運動などで子供の体に衝撃が加わると、骨端線が損傷してしまう場合もあるのです。
・ジャンプしたり走ったりすることで、子供の体重でも大きな負荷がかかると損傷する場合がある
・発達途中の子供の体は骨も未熟で柔らかいため、骨端線を損傷する可能性が高い
1-3.通常の骨折と同じで骨に強い衝撃がなければ損傷しない
第1章の冒頭でも少しお話しましたが、大人でも起こりうる通常の骨折と同じで、骨に強い衝撃が加わらない限り、どんなに柔らかい軟骨だとしても、骨端線が損傷することはありません。
強い衝撃というのが、具体的にどういうことかと言うと・・・
・ジャンプしたり高いところから落ちたりした時に、変な体勢で着地してしまう
・転んだ時などに不意に手を地面ついてしまった時
などと、子供の手や足に全体重が乗って、体に大きな負荷をかけてしまいます。
他にも・・・
・物が飛んできたり落ちたりしてきて体に当たってしまった時
・壁や物にぶつかってしまった時
・突き指等で打ちどころが悪かった時
などの、自分の意思ではなく、何かしらの外的要因によって衝撃が加わる場合もあるでしょう。
ただまれに、スポーツをやっている子供で、慢性的な疲労の蓄積により、骨端線がすり減ることによって損傷する場合もあります。
1-4.骨端線が損傷しやすい行動(スポーツなど)
足を中心とした下半身の骨端線が損傷しやすいわけですから、ジャンプしたり走ったりするなどの、足に負荷のかかる動き(遊び)が痛めやすいでしょう。
また、足を使うことの多いスポーツも、負荷のかかりやすい激しい運動になります。
骨端線を損傷しやすい行動は・・・
・ピョンピョン跳ねることなどのジャンプをする
・公園などで元気よく走り回る
・高いところから飛び降りて強く地面に着地する
など
骨端線を損傷しやすいスポーツは・・・
・何度も高くジャンプを繰り返すバスケットやバレーボール
・長時間走ったりボールを蹴ったりして足を多く使うサッカー
・腕や手でボールを投げたりラケットでボールを打ったりする野球やテニス
など
ただし、これらの行動やスポーツに関しても、これをおこなったからすぐに骨端線が損傷するというようなことは決してありません。
あくまでもこれらの行為の最中で、損傷してしまうような強い衝撃が骨端線に加わらない限りは、簡単に損傷することはないです。
不安な気持ちもあるでしょうが、あまり心配し過ぎないようにしてくださいね。
2.骨端線が損傷すると子供の骨の成長に影響してしまう
骨端線を損傷してしまうと、身長が伸びることなど、子供の骨の成長に影響を与えてしまう可能性が高くなります。
ただし、子供が骨端線を損傷することで「身長がどこまで伸びるのか」や「体の成長が止まってしまうのか」などの、将来必ずこうなってしまうということまでは、断定することができません。
2-1.骨端線を損傷しても身長が必ず伸びないわけではない
あくまでも骨の成長に影響を与えてしまうことはありますが、骨端線を損傷することによって、必ずしも身長が伸びなくなるというわけではありません。
骨端線は子供の体全身にあるわけですから、骨端線を損傷したからといって、身長が伸びなくなることに直結はしません。
ただし、足の骨(すねの骨なども含む)の骨端線を損傷した場合には、子供の身長への影響を、少し疑ったほうがいいでしょう。
足の骨への影響は主に・・・
・骨端線の早期閉鎖
・変形した状態で骨が成長してしまう
という2点です。
また、上半身の骨への影響でいうと、突き指などによって指の骨端線を損傷したことで、骨が変形し、指が曲がったままの状態で成長してしまうことが多いです。
ここからは、足の骨への影響について詳しく見ていきましょう。
2-1-1.骨端線の早期閉鎖
本来伸びる予定だった骨端線が損傷してしまうわけですから、想定よりも早く骨端線が閉じてしまう可能性があります。
早期閉鎖によって、子供の骨に影響が出てきます。
・一部の骨端線が早期閉鎖することで、骨の成長バランスが崩れる
(損傷しているほうとしてないほうの隣り合う骨の長さが変わってくる)
・骨の成長バランスが崩れることで、ヒザなどの関節の痛みに影響してしまう
・早期閉鎖したほうの脚だけが短くなり、左右の長さが違う脚になる可能性もある
2-1-2.変形した状態で骨が成長してしまう
早期閉鎖はしなくても骨端線の損傷の仕方によっては、折れた骨が変形した状態で治ってしまうこともあります。
骨が変形した状態のままで子供が成長してしまうと、関節などの動きに影響することは間違いありません。
・骨が変形した状態で成長していくことで、関節の軟骨にまで影響する可能性もある
(関節の軟骨にまで影響すると、将来歩行困難になる危険性もある)
・脚だけでなく手や腕にも影響の可能性はある
(手や腕にも骨端線はあるため、損傷すれば上半身の骨にも影響はある)
・変形した辺りの関節の可動域が狭くなる
(腕や脚の曲げ伸ばしなどに影響してきます)
2-2.お医者さんでも損傷後の子供の成長予測は困難
病院へ行って、小児外科医や骨の専門科医に診察してもらったとしても、骨端線を損傷した影響で、子供の身長が「どこまで伸びるのか」「どれぐらいで止まってしまうのか」ということはわかりません。
・たとえレントゲンで見ても損傷した骨端線では判断することができない
・現時点で損傷した骨端線を見て身長の伸びに問題なくても、将来的に影響する可能性はある
(お医者さんもそこまでは予測できない)
・損傷した骨端線ではおおよその数値予測も難しい
・元々おおよそでしか判断できない身長の推移を損傷した状態で予測するのは困難
(そもそも骨端線が正常でも完璧に予測することは難しい)
などの理由が挙げられるでしょう。
本来は、正常な骨端線の状態で成長ホルモンの分泌状況などから、将来これぐらいは伸びるであろうというおおよその子供の身長推移が予測できます。
しかし、骨端線が損傷してしまった状態だと、どんなに専門のお医者さんでも、子供の成長を予測することは難しいことなのです。
3.骨端線の損傷によって痛めた関節を悪化させない方法
骨端線を損傷して、骨が変形したままで成長してしまうと・・・
・関節が固まった状態で曲がりづらくなる、または曲がらない
(曲がったままで関節が伸ばせないという場合もある)
・関節の可動域が狭くなってくる
(腕や脚を上げたり回したりすることがやりづらくなる)
など、普段の生活や運動をする上で不便になってしまう状況になります。
子供の時に骨端線を損傷して治療を施したとしても、関節の可動域がどうなるかということまでは予測できません。
また、損傷して痛いからとずっと固定したままの状態でいると、せまくなった可動範囲で固まってしまい、そのまませまい可動域の関節で過ごしていくことになります。
損傷後に動きづらくなった関節を、悪化させずに少しずつ可動させやすくしていくためには・・・
・固定具が外れたら1日数回は損傷箇所周辺の関節を動かすようにする
(痛みが激しくならない程度に動かしてください)
・関節周りの筋肉が固まりにくくするためのストレッチをおこなう
(筋肉の柔軟性を保つようにする)
・痛みが悪化しない程度に軽い筋トレをおこなう
(関節周りの筋肉量を減らさないようにするため)
などの方法をおすすめします。
ただし、どの行為も適当にやってしまうと、逆に症状を悪化させてしまう可能性があるため、掛かり付けの医師に指示を受けてからおこなうようにしてください。
4.骨端線の損傷に関する怪我
骨端線を損傷すると一言で言っても、痛める箇所などによって、内容が少し変わってきます。
ここからは「骨端線を損傷しやすい箇所」と「骨端線の損傷による代表的な怪我」について、ご紹介していきます。
4-1.骨端線を損傷しやすい箇所
骨端線を損傷しやすい箇所は、怪我をする内容によって2つに分かれます。
・衝撃が加わったり何かにぶつけたりすることなどによる外傷
・蓄積した疲労などによって起こる慢性的な症状
(一般的にオーバーユースとも言われている)
という2つになります。
*外傷によって骨端線を損傷しやすい箇所
・手の指の関節、手首、手のひら
・足の指の関節、足首、足の甲、くるぶし周辺の骨
・すねの骨、ひざの関節周辺の骨
など
*蓄積した疲労などによって骨端線を損傷しやすい箇所
・肩周辺の骨、ひじ周辺の骨
・すねの骨、ひざの関節周辺の骨
など
4-2.骨端線の損傷による代表的な怪我
*脛骨遠位骨端線損傷
すねの骨にある骨端線が損傷することによる怪我です。
ジャンプして上に跳ぶことや高いところから飛び降りて着地する時などに、強い衝撃が加わることで発症しやすいです。
(バスケットやバレーボールなどで発症しやすい)
*中足骨の骨端線損傷
中足骨と言われる足の甲か土踏まずの辺りにある、足の中心に位置する箇所の骨です。
脛骨の怪我と同じように、跳んで着地する時などの強い衝撃によって、中足骨の骨端線が損傷してしまいます。
*基節骨、中節骨、末節骨の骨端線損傷
それぞれ手の指に関する骨です。
突き指や打撲などの外傷によって発症しやすい怪我です。
*リトルリーガーズショルダー(エルボー)
主に野球をやっている子供が、ボールの投げすぎなどによって、肩に(ショルダー)疲労や痛みが蓄積されることで発症しやすいです。
肩だけでなく、ひじ(エルボー)も同じ症状になることがあり、ラケットでボールを打つテニスなどでも発症しやすいです。
5.骨端線損傷の治療方法
骨端線を損傷した場合、基本的に手術はおこないません。
治療方法としては、麻酔をした後に手で正常な位置に戻す「徒手整復」がおこなわれ、損傷した患部を3週間から4週間ギプスによって固定し、治していきます。
しかし、状況によっては手術が必要となる場合もあります。
子供の成長に関わる怪我ですから、お医者さんと慎重に診断をおこない、その子にとって最適な治療をおこなっていくことになります。
また、骨端線を損傷した疑いがある場合は、近くにある外科・小児外科・整形外科のどれかを、受診するようにしてください。
骨折や脱臼をした時に、手によって骨を正常な位置に戻す施術のことです。
6.<まとめ>
骨端線の損傷は、子供の骨の成長に関わってしまう可能性がある症状です。
あなたも自分の子供に、身長が伸びることなどの成長に関わるような損傷は、起きてほしくないと思っていることでしょう。
だからと言って損傷させたくないからと、外で遊ばせたり運動させたりしないようにすることは、あなたの子供が可哀想です。
あなたも心配になってしまうと思いますが、全ての子供が骨端線を損傷させてしまうわけではありません。
あなたの周りを見渡してみて、骨端線を損傷したまま成長した人というのがどれだけいるか考えてもらえれば、それほど深刻に考えないといけない症状ではないことがわかりますよね。
あまり心配し過ぎずに、子供には適度な遊びや運動をさせてあげてほしいです。
もちろん野球やサッカーなど、子供が大好きなスポーツを、全力でさせてあげても構いません。
もし子供が骨端線を損傷してしまったら、それ以上悪化させないように親であるあなたが支えてあげてくださいね。