あなたも、
「子供の運動神経が悪いのは、運動が苦手な私の遺伝かしら?」と悩んでいるかもしれません。
また、
「本当に遺伝で運動神経の良い悪いが決まってしまうの?」と疑問に思っているかもしれませんね。
実際に、多くの人が「運動神経は遺伝するものだ」と思っています。
しかし・・・
【運動神経は親から子供へ約10%しか遺伝しません】
【運動神経は鍛えて伸ばしていけます】
それなのに、なぜ多くの人が「運動神経は遺伝するもの」だと思っているのか。
この認識のズレが生まれてしまう原因は、世の中の【運動神経】と【遺伝】に対する考えが、大きく間違っているため、おかしな情報として伝わっているからです。
正しく認識してもらうには【運動神経】と一緒に【運動能力】というものについて、お話していかなければなりません。
わかりやすく説明すると・・・
【運動神経】は脳からの指令による行動
(五感による感覚が問われ、経験などの要素が大きい)
【運動能力】は体そのものが関わる能力
(筋肉など生まれ持った体の構成が重要なため、遺伝の要素が大きい)
実際には、「運動神経」と「運動能力」に関して、どちらとも親からの遺伝がありますし、後に鍛えて伸ばしていくこともできます。
ただし、影響する大きさや体格などの要素で見た時に、運動神経よりも運動能力のほうが大きく遺伝します。
また、子供の運動神経の良し悪しを決めるのは「遺伝」「環境」「本人の意志」といった、3つの条件がすべて揃ったうえで、結果的に運動神経が良く、運動ができる子となります。
今回は、遺伝による子供の運動神経の悪さに悩んでいるあなたのために、
【運動神経は鍛えて伸ばしていける】
【運動能力は遺伝的要素が強い】
【子供の運動神経を伸ばしやすくする方法】
【子供の運動能力を伸ばす方法はあるのか】
【運動神経の良し悪しは遺伝・環境・本人の意志の3つで決まる】
という運動神経と遺伝or環境の関係性について、お話していきたいと思います。
目次
1.【運動神経と遺伝の関係性】運動神経は鍛えて伸ばせる
【運動が良くできる子=運動神経が良い子】というふうに、あなたも思っているかもしれませんが、運動神経の良さだけで運動ができる子とは決めつけられません。
運動が良くできる子にするには・・・
「運動神経」と「運動能力」
という2つの要素が、バランス良く備わっていることによって、運動が良くできる子と定義することができます。
1-1.運動神経とは
【運動神経とは】
神経というのは、脳で判断した情報を全身の筋肉に「次はどう動け」と、指令を送る働きになります。
スポーツや運動において、脳からの指令がスムーズに伝われば「次に何をおこなえばいいか」という判断力や「体の不安定な状態を瞬時に戻す」というバランス感覚などが優れている人と言え、運動神経が良い人とも言えるでしょう。
上記で説明したように、脳から全身の筋肉に指令を送り、伝達する働きのことを、運動神経というふうに呼んでいるだけなのです。
例えば・・・
・サッカーやバスケットなどで、瞬時に状況を判断して味方にパスや指示を出せる
・柔道などで、ぶつかって体勢が崩れたり投げられたりした時に、ケガを防げるよう瞬時に受け身を取れる
・野球やテニスなどで、速いボールを的確に当てられる
また、日常生活の中でも、熱いものや冷たいものに手や足で触れた時に、危険を回避するために手や足を触ったものから瞬時に離す行為。
これも脳からの指示によるもので、運動神経が関わる行動です。
大人でいえば、車を運転するのにも瞬時の判断力や安全なハンドル操作が必要なため、運動神経が重要と言われています。
この一連の行動も運動神経の一部とされ、運動神経が悪い人は、こういった危険を回避する行動も他の人より悪い可能性が高いです。
1-2.運動神経が良く、運動能力が低い人の例
*運動神経が良く、運動能力は低い人の例
・足は遅いがコーナーリングが上手かったり走るフォームが綺麗だったりする
(またはスタートの合図に対する反応が速いなど)
・体型は太っているがとても機敏な動きをする
(ボールなどへの一瞬の反応速度が速い)
・身長の低さがハンデにならないぐらいの華麗なプレイをする
(サッカーやバスケットなどのドリブルで、体格が大きい相手を翻弄することができる)
・遠くへ飛ばすパワーは無いが、投げ方や蹴る時のフォームが綺麗
2.【運動神経と遺伝の関係性】運動能力は遺伝的要素が強い
第1章でお話した通り、運動ができる子と定義するには、運動神経だけでなく運動能力も重要になってきます。
運動神経とは違う、運動能力とはどういうものなのかについて、お話していきます。
2-1.運動能力とは
【運動能力とは】
身長や体重・筋力など、生まれ持った体格や筋肉などが左右される行動の能力です。
瞬発力や柔軟性といった身体の力そのものを使う行動には、とても重要な能力になってきます。
運動能力は、トレーニングで鍛えることも可能ですが、生まれ持った体格などが左右されることを考えると、遺伝的要素が強いと言えます。
例えば・・・
・体格を活かしたプレイができる
(身長の高さを活かしたバレーやバスケットなど)
・パワーを活かしたプレイができる
(筋力や体重を活かした柔道やラグビーなど)
・瞬発力を活かして速く走れる
ただし、生まれつきの遺伝が関わる能力のため、元々体格の細い人が大人になってから筋トレなどで体を鍛えたとしても、その鍛えられた肉体の成果に関しては、遺伝として自分の子供に反映はされません。
2-2.運動能力が高く、運動神経が悪い人の例
*運動神経は悪く、運動能力が高い人の例
・身長は高いが動きが遅くて高さを活かしきれていない
・筋力はすごい(マッチョな人)がスポーツは苦手で動きに活かしきれていない
・遠くへ飛ばすパワーはあるが、投げ方や打ち方、蹴り方がおかしい
・足は速く100mなどの直線は得意だが、コーナーリングが必要な走りは苦手
(カーブを曲がる時にスピードが落ちやすくなる)
3.子供の運動神経を伸ばしやすくする方法
子供の運動神経を伸ばしてあげたいと思った時に、2つのポイントに気をつけてみてください。
それは・・・
【ゴールデンエイジ(4~12歳)の時期が大切】
【ゴールデンエイジまでにいろいろなスポーツに触れさせてあげる】
というポイントです。
3-1.ゴールデンエイジ(4~12歳)の時期が大切
子供には・・・
運動神経が大きく伸びる時期である4~12歳頃の【ゴールデンエイジ】という時期があります。
この時期にいろんなスポーツに触れさせてあげると、子供の運動神経や運動能力の可能性が広がり、将来の選択肢を増やすことにもつながります。
3-2.ゴールデンエイジまでにいろいろなスポーツに触れさせてあげる
【3-1ゴールデンエイジ(4~12歳)の時期が大切】でお話したように、ゴールデンエイジまでにいろいろなスポーツに触れさせてあげるのが、子供の運動神経や運動能力を伸ばすために重要です。
ゴールデンエイジまでにいろいろなスポーツに触れさせてあげるのが、どれだけ大切なのかというのを、実際のプロスポーツ選手を例にしてお話していきます。
サッカー日本代表の「本田圭佑」選手は、小学生のころにサッカーと並行して、水泳を習っていました。
その効果により、泳ぐことで鍛えられた筋力と関節の柔軟性を身につけたこと。
また、長時間ピッチを走り回ることができる体力(肺活量)が鍛えられたことで、現在のサッカーでのプレイに活かされています。
ラグビー日本代表の「五郎丸歩」選手は、小学生のころにラグビーと並行して、サッカーを習っていました。
その効果により、ボールを正確にとらえて、ゴールを狙うことができる精度の高いキックを身につけたこと。
また、ボールを蹴る力が鍛えられたことで、現在のラグビーでのプレイに活かされています。
このように、子供が小さい頃からいろんなスポーツに触れさせてあげることは、子供の将来の可能性や選択肢を増やしてあげるためにも大切なのです。
4.子供の運動能力を伸ばす方法
遺伝の影響が強い運動能力ですが、ちゃんと鍛えて伸ばすこともできます。
しかし、主に運動能力が関わる部分は・・・
・体格(身長や体重)
・筋力や体力
などになります。
それぞれによって、鍛えて伸ばしていけるかどうかが変わってきます。
運動能力のほとんどが、筋肉などの体の「成長」に関わる部分が多いからです。
4-1.体格(身長や体重)を鍛えて伸ばすことは難しい
身長や体重などの体格は、人の成長の部分になってくるため、鍛えて伸ばしていくのは難しいです。
運動能力の中でも、一番遺伝の要素が左右される部分と言えます。
ただし、直接的に身長を伸ばせるわけではないですが、適度な運動や筋トレをしておけば、身長が伸びるなどの発育に関わる成長ホルモンが分泌されやすくなるため、全く効果がないとは言えないかもしれません。
しかし、子供のうちに体格に関する運動能力を伸ばし、成長させていくには・・・
・バランスの良い食事
・しっかりと睡眠をとる(21時頃には就寝し、毎日8~9時間の睡眠)
などと、できれば運動などで鍛えて伸ばしていくのではなく、規則正しい生活習慣の中で子供を成長させてほしいと思います。
4-2.筋力や体力は鍛えられる(過度なトレーニングは注意)
体格とは違い、筋力や体力などの運動に直接関わってくる部分は、それに合わせたトレーニングをおこなって鍛えられます。
筋力を鍛えるには・・・
【腕立て伏せや器具などを利用した筋トレで鍛える】
体力を鍛えるには・・・
【日頃から体を動かし、走り込みなどによって体力を鍛える】
成長過程にある15歳(個人差はある)までの子供は、発育途中で体がまだできあがっていません。
その状態で過度な筋トレや体力トレーニングをおこなうと、骨や軟骨を傷つけてしまう可能性があり、子供の成長(身長が伸びることなど)にとって悪影響となります。
5.運動神経の良し悪しは遺伝・環境・本人の意志の3つで決まる
子供の運動神経が良くなる(正確に言うと運動ができる子供になる)には、
・【遺伝】
・【環境】
・【本人の意志】
この3つの条件が全て揃うことで、子供を運動神経が良く、運動ができる子に育てられる可能性が高まります。
5-1.遺伝の要素があれば周りの子供に差を付けることができる
運動神経も運動能力も環境によって変えられると言っていますが、やはり子供への遺伝による影響は少なからずあるでしょう。
「遺伝的な要素が強い子供」+「恵まれた練習環境でのトレーニング」
=【普通に同じだけのトレーニングをした子供では勝てない】
遺伝的要素が強い子供と普通の子供では、まずスタート地点が違ってきます。
同じ練習環境で同じだけのトレーニングをおこなったとしても、遺伝的要素が強い子供からすでに先を越された状態でスタートをすることになります。
遺伝的要素が強い子供を越えるには、その子を上回る量のトレーニングをおこなうしかないのです。
運動神経が良く、運動ができる子に育てたい場合は、やはり遺伝の要素も必要であるというのがわかりますね。
【遺伝の要素が必要と言える理由】
*もしも環境のみで技術が向上し、プロの選手になれるのであれば、その選手と同じクラブやスクールに通っていた人は、みんなプロの選手になっていないとおかしい
*遺伝が関係ないのであれば、黒人や白人、アジア人など人種によって、運動能力に差なんて出るはずがない
*ある一定のレベルまでは、環境か努力次第でどうにでもなるが、そのレベルからもっと上に行こうとすれば、いい遺伝子を持った人の方が当然有利になる
(遺伝子が良くて、一流の環境で努力した人に勝てるわけがない)
5-2.遺伝が絶対ではない|良い環境で子供を育ててあげることも大切!
子供の運動神経や運動能力を伸ばしてあげるには、遺伝だけでなく、良い環境の中で鍛え育ててあげるのも大切です。
育てる環境によっては、遺伝を越える能力を身につけるのも可能でしょう。
遺伝だけですべてが決まらず、環境によって運動神経や運動能力は左右されるということについて、細かくお話していきます。
5-2-1.スター選手の子供が必ずスター選手になれるわけではない
親の運動神経や運動能力が、完璧に子供へ遺伝するわけではありません。
良い遺伝子があったとしても、環境によって変わってしまうことはよくあることです。
【例】
プロ野球の選手でいうと
〔父〕長嶋茂雄(元巨人)→〔子〕長嶋一茂(元巨人)
〔父〕野村克也(元ヤクルト)→〔子〕野村克則(元ヤクルト)
〔父〕落合博満(元中日)→〔子〕落合福嗣(声優)
というふうに親に関しては、あまり野球に詳しくない人でも、知っている可能性が高い有名なスター選手ばかりです。
それに比べて子供たちは、長嶋さんや野村さんのように親と同様プロ野球選手になっても、活躍できずに終わった人もいれば、落合さんのように野球とは全く関係のない仕事をしている人もいます。
5-2-2.人種が違っても環境次第で能力差は縮められる
身長や体格・筋力など、日本人(アジア人)とは明らかに差を感じてしまうのが、黒人や白人の外国人ですよね。
遺伝は関係がないとわかっていても、スポーツの試合を見ていたら、遺伝との関係性を疑いたくなってしまいます。
しかし、どれだけ環境や遺伝子レベルで違うとは言っても、運動神経や運動能力を伸ばすという点においては、ある意味条件は同じなのです。
黒人の人が・・・
・全員足が速いわけではない
・マラソンなどで、全員が日本人よりもタイムが速くて体力があるわけではない
・全員バスケットが上手くて驚異的なジャンプ力を備えているわけではない
白人の人が・・・
・全員足が長くて、身長が高いわけではない
・白人の人が多いヨーロッパがサッカー発祥の地だからといって、全員サッカーが上手いわけではない
・全員がマッチョでパワーがあって強いわけではない
というように、すべての人が当てはまるわけではないですし、当然そのスポーツをおこなえる環境にいなければ、習って技術を磨くこともできないのです。
水泳の世界大会などを見ていても、黒人の選手が大会に出場しているところを、ほとんど見たことがないですよね。
それは、アフリカの地域に水泳という文化がほとんどなく、できる環境も少ないためだと言えます。
このことからも、運動には人種や遺伝の差だけではなく、それをおこなえる環境があるかどうかというのが、大切なのがわかりますよね。
5-2-3.親や周りの人がサポートしてくれる環境があること
子供が運動神経や運動能力を伸ばしていくには、親や周りの人のサポートというが必要不可欠になってきます。
大抵トップレベルで活躍している選手などには、熱心に応援や直接指導もする親がいるものです。
【例】
杉山愛(元テニスプレーヤー・ダブルス世界チャンピオン)→〔母〕杉山芙沙子さん
福原愛(卓球女子日本代表・オリンピック銀メダリスト)→〔母〕福原千代さん
浜口京子(元レスリング世界チャンピオン)→〔父〕アニマル浜口さん
ただし、ここまでのレベルに育てなくても、子供の運動神経や運動能力を伸ばしてあげたいと思えば、赤ちゃんの時期ぐらい早い段階から育てる必要もありますし、中学生ぐらいからでも親のサポートなどがあれば、伸ばしてあげることができます。
運動をさせることに熱心な親がいれば・・・
・赤ちゃんの時期(生まれて間もない頃)ぐらい早い段階から運動に馴染ませてあげて、自然と
運動神経や運動能力が伸びる環境が作られる
・食事面や健康面など、体のサポートをしっかりやってもらえる
・大抵熱心な親は自分が元スポーツ選手や関係者だったりすることも多いため、コーチや施設など、最適な環境を子供へ作ってあげられる可能性が他の人よりも高くなる
というように、親や周りのサポートがある環境は、確実に子供の運動神経や運動能力を伸ばしてあげられる可能性が高くなります。
5-3.遺伝や環境が揃っていても最終的には本人の意志次第
ここまでに「遺伝」の必要性「環境」の大切さについてお話してきましたが、この2つの条件が揃っていても、本人に運動やスポーツに関する興味が無ければ、何の意味もありません。
もしあなたが、子供の運動神経や運動能力を伸ばしてあげたいと思っているなら
まずは、
・子供が本当にスポーツを好きなのか(やりたいと思っているのか)
・あなたの子供は本当に運動神経を伸ばしたいと思っているのか
というのを見極めて、強制することなく自ら進んでやるよう、あなたが手助けしてあげてください。
6.<まとめ>
今回の記事を見て、子供の運動神経は10%しか遺伝しないと言われながらも、やっぱり遺伝は少なからず関係してくるとわかっていただけたと思います。
しかし、子供の運動神経は後から環境によって伸ばしていくことは可能ですし、運動神経と運動能力の違いについて理解しておけば、今からでも運動神経を鍛えるのは遅くはありません。
あなたのお子さんを、プロのスポーツ選手にする必要はありませんが、運動神経は日常生活の中でも必要な能力です。
「運動ができる子供にする」というのにこだわり過ぎずに、子供将来のために今から運動神経を伸ばしてあげてくださいね。