一般的に「記憶力が高い人=頭の良い人・仕事ができる人」だと、思っている人は多いかもしれませんね。
一概にそうとは決めつけられませんが普段生活をしていて、確かに記憶力が高い人は勉強ができる人や仕事ができる人が多いと感じますよね。
記憶力が高いか高くないかだけで、人の良し悪しを判断はできません。
しかし、記憶力が高い人のほうが、周りの評価は確実に高くなるイメージがあります。
そのため、受験に失敗してしまったり仕事でよくミスをしてしまったりするなど、もっと記憶力が高ければと過去に葛藤していたという人も少なくないでしょう。
(記事を書いている私も学生時代は頭の良い方ではなく、記憶力を上げたいと葛藤していました。)
しかし、実際に頭の良い人だけが記憶力が高いというのは間違いで、どんな人であっても、ちょっとした「訓練(工夫)」をするだけで、記憶力をアップさせられます。
訓練と聞くと、凄く大変な鍛え方をするのではないかと思いますよね?
「でも、そんなことはありません!」
普段の生活の中にちょっとした工夫をしてもらうだけで、簡単に訓練できる記憶術や記憶力アップの方法ばかりです。
記憶力アップに悩んでいる方も、これらの記憶術や記憶力アップ法で訓練をして、密かに周りの人たちに差を付けていきましょう。
では、その記憶術や記憶力アップ法の訓練について、お話していきたいと思います。
1.訓練することで記憶力アップにつながる8つの記憶力アップ法
まずは、何度も繰り返し訓練することで、記憶力をアップさせてくれる8つの記憶法について、例題を交えながらご紹介していきます。
1-1.記憶力の訓練【反復法】
最初の記憶力の訓練は「反復法」です。
人は記憶したい情報を何度も繰り返し思い出しながら覚えることで、半永久的な記憶にしていくことができます。
要するに、これが「反復法」の訓練となり、記憶力アップ法の中で一番代表的なものです。
反復法を使う場合は、記憶したいことを最低でも5回以上は繰り返し思い出して、訓練するようにしましょう。
例えば・・・
・誰かと待ち合わせをしていて、指定場所が途中でわらなくなり、電話して今いる場所から指定場所への経路を確認したとします。
↓
確認した経路が、「そこからまっすぐ歩いて、○○交差点を左に曲がって、3分ほど歩くと左手に交番があり、少し歩いたところを左に曲がります。そこから1分ほど歩いたところに茶色のビルがあり、その1階の喫茶店が待ち合わせ場所です」
↓
その伝えられた内容を、「○○交差点を左、3分で左手に交番、少し歩いて左、1分で茶色のビルの喫茶店」と、歩きながら何回も繰り返し思い出しながら行くことで、間違わずに到着できます。
↓
こういったことは、日常の中でもよくある事例だと思いますし、このような場面でも、反復法を活用していれば、容易に記憶していけます。
1-2.記憶力の訓練【連結法】
次の記憶力の訓練は「連結法」です。
記憶したいいくつかのものを上手く連結させて、互いに結び付けていく記憶力アップ法です。
元々意味のなかったものに対して意味を持たせ、記憶していきます。
この連結法は、古代ギリシャ時代から用いられてきたとても歴史の古い記憶力アップ法です。
<連結法の例題>
1つ例を挙げたいと思います。
下記にランダムに選んだ関係性のあまり無い7つの項目があります。
・パソコン
・新幹線
・鳩
・公園
・休日
・3D
・読書
この例に挙げた項目を連結法で訓練していこうとすると、このようになります。
1:まず「パソコン」と「新幹線」を結び付けるために、新幹線に乗り、その中でパソコンを使用している状況をイメージしていきます。
↓
2:次に「新幹線」と「鳩」を結び付けるために、新幹線が走っているところの上空で、軽やかに飛んでいる鳩の姿をイメージします。
↓
3:次に「鳩」と「公園」を結び付けるために、空から地上(公園)に降り立った鳩が、公園で立ち止まって休憩している様子をイメージします。
↓
4:次に「公園」と「休日」を結び付けるために、緑に囲まれた公園へ休日に家族で遊びに出かけているところをイメージします。
↓
5:次に「休日」と「3D」を結び付けるために、休日に家でゆっくりとくつろぎながら、3Dテレビを家族で見ていることをイメージします。
↓
6:最後に「3D」と「読書」を結び付けるために、3Dテレビを見終わってから、部屋で自分の好きな小説を1人で読書していることをイメージします。
このように何の関係性も無い項目を結び付けていって、「パソコン」を思い出せば「新幹線」が、「新幹線」を思い出せば「鳩」がというふうに順序立てて思い出していけます。
そして、そのまま「公園」、「休日」、「3D」、「読書」という感じで自然と記憶力アップできてきます。
これが連結法による、記憶力アップの訓練となります。
1-3.記憶力の訓練【物語法】
次の記憶力の訓練は「物語法」です。
物語法は、記憶したい言葉などを物語の構成にしていく記憶力アップ法です。
例えば、記憶したい数字などを言葉化し、それをつなぎ合わせて物語にして訓練します。
03・23・95・20という数字があった場合に、03→東京、23→23区、95→Windows95、20→20歳というふうに考えます。
これを物語化すると「東京(03)の23区内(23)にあるカフェで、Windows95(95)のパソコンを使って20歳(20)の息子にメールを送る。」
このような感じで、物語化しながら記憶していきます。
これを繰り返すことで、記憶力を訓練ができます。
1-4.記憶力の訓練【関係法】
次の記憶力の訓練は「関係法」です。
関係法は、記憶したいことを、すでに自分が知っている身近な情報などと結び付けていく記憶力アップ法です。
例えば・・・
「坂本 一朗」という名前の人がいたとします。
この名前を関係法で覚えると、姓の「坂本」は歴史上の人物である「坂本龍馬」を連想していき、名の「一朗」は野球選手の「イチロー(鈴木一朗)選手」というふうに記憶していきます。
このように関係法によって訓練していけば、記憶力アップを目指していけます。
1-5.記憶力の訓練【語呂法】
次の記憶力の訓練は「語呂法」です。
語呂法は、言葉の通り語呂合わせの記憶力アップ法です。
この記憶力の訓練は、あなたも学生時代によく使っていて、馴染みのある記憶力アップ法ではないでしょうか。
有名な例を挙げると・・・
・数学 √2=1.41421356 → ひとよ、ひとよに、ひとみごろ
・歴史 1192年 → いい国つくろう、鎌倉幕府
などと、あなたも1度は聞いたことがありますよね。
このように語呂合わせで記憶していけば、覚えづらい内容でも頭の中にすんなりと入って記憶していけます。
昔ながらの記憶力アップ法で、記憶力を訓練していきましょう。
1-6.記憶力の訓練【頭文字法】
次の記憶力の訓練は「頭文字法」です。
頭文字法は、記憶したい項目の頭文字を使い、新しい単語などを作っていく記憶力アップ法です。
例えば、ランダムな4つの単語を覚えたい時に、頭文字法で組み合わせて新しい単語を作ります。
「Dictionary」、「English」、「September」、「Chocolate」の、頭文字をそれぞれ使い「DESC」という単語を作って、4つの単語を記憶していくという記憶力アップ法です。
1-7.記憶力の訓練【映像法】
次の記憶力の訓練は「映像法」です。
映像法は、頭の中で言葉と映像をイメージしていく記憶力アップ法です。
普段の生活ではあまり使用していない、感覚性を司る右脳を使って訓練する記憶力アップ法とも言われています。
映像法には2種類の訓練方法があります。
1-7-1.カメラ法
1つ目の種類は「カメラ法」という訓練方法です。
カメラ法は、写真のように記憶したい内容を頭の中でイメージしていきます。
頭の中でイメージするだけという、とても簡単な訓練方法です。
わかりやすく言うと、イメージトレーニングと同じような訓練だと思ってください。
例えば・・・
「プレゼンテーション」「コーチング」「トレーニング」
という言葉があった時に、
・「プレゼンテーション」は、自分が発案した企画を、会議中に大勢の前でプレゼンしている姿
・「コーチング」は、何かを教えている姿
・「トレーニング」は、ジムでマシーンを使いトレーニングする姿
というふうにイメージし、その描写を写真化して頭の中に記憶していきます。
【イメージの例】
「プレゼンテーション」のイメージ
1-7-2.ムービー法
2つ目の種類は「ムービー法」という訓練方法です。
ムービー法は先ほどのカメラ法と違い、イメージした内容に動きを加えることで頭の中でムービー化していく訓練方法です。
この訓練方法も、記憶したい内容の情景をイメージするだけのため、とても簡単に実践できる訓練方法になります。
例えば・・・
先ほどカメラ法のところで例に出して写真化した、「プレゼンテーション」「コーチング」「トレーニング」に、動きを付けてムービー化していきます。
・「プレゼンテーション」は、身振り手振りを入れて熱弁している姿
・「コーチング」は、後輩など誰に教えるかを明確にして実際に教えている姿
・「トレーニング」は、汗をかきながら必死に鍛えている姿
というふうにして、記憶したい内容に動きを加えてあげれば、カメラ法よりもさらにしっかりと記憶していけます。
【イメージの例】
「コーチング」のイメージ
ただし、ムービー法を使う場合には「記憶したいことのイメージが明確であること」と「ちゃんと動きを付けて記憶できるもの」という2点に注意して、訓練をおこなってください。
1-8.記憶力の訓練【配置・配列法】
次の記憶の訓練は「配置・配列法」です。
配置・配列法は、元々ばらばらな情報をあらかじめ位置などを設定しておき、その場所に記憶する内容を配置・配列して意味を与えていく記憶力アップ法です。
例えば、いくつかの記憶したい項目があったとした時に、これを自分の体の部位やお家などに当てはめて覚えていきます。
頭は○、首は△、腕は☆というふうに、それぞれの部位に配置していけば、頭に入っていきやすくなります。
<例>
「TTP」、「渋谷」、「ありがとう」、「法隆寺」、「鹿児島県」、「レアメタル」、「ライオン」、「オーロラ」、「お祭り」、「NASA」という記憶したい言葉があったとします。
これを、自分のお家のいろんな場所に照らし合わせて覚えようとすると・・・
・「TTP」⇒ 玄関
・「渋谷」⇒ リビング
・「ありがとう」⇒ キッチン
・「法隆寺」⇒ お風呂
・「鹿児島県」⇒ ダイニング
・「レアメタル」⇒ トイレ
・「ライオン」⇒ 寝室
・「オーロラ」⇒ 洗面所
・「お祭り」⇒ お庭
・「NASA」⇒ 子ども部屋
というような形で、自分に馴染みのあるところに当てはめることにより、玄関=「TTP」だと連想されていき、記憶力アップへとつながっていきます。
2.試験に向けて記憶力をアップする訓練
ここからは、試験前などに取り入れて欲しい記憶力をアップさせるための、訓練についてご紹介していきます。
2-1.記憶すべきものを抽出し強い印象を与える
脳は、1度に大量の情報を記憶できません。
そのため、試験対策で重要な情報を記憶したい場合は、その他の情報から重要な情報のみを抽出し、仕分けしていきながら訓練していきます。
2-1-1.強く感じたものを抽出する
勉強をしている時に、「これだけは覚えた方がいい」と直感的に思うことがありますよね。
それは、自然と脳が「記憶しなくてはいけないことだ」と感じ取っているのです。
そのため、記憶した方がいいと思ったものはすぐにメモを取るなどして、強く印象付けて覚える訓練をしていきましょう。
2-1-2.教科書等で指示されていること
勉強に使う教科書やテキストには、「ポイントはここです!」「チェックポイント!」などと、必ずどこかに注目ポイントとして指示されている箇所がありますよね。
当然のことながら、ここは記憶しておくべきポイントになるため、しっかりと強い印象を残して覚えていく訓練をしましょう。
2-1-3.暗記リストを作る
記憶力アップのためには、何度も繰り返し思い出して訓練していくことが重要です。
そのため、重要な情報ほど「リスト化」などをおこない、抽出しておきましょう。
勉強のたびに教科書などから情報を見つけ出すのは効率が悪いですし、記憶力アップする時間のロスになるため、先にリスト化をしておくことですぐに見つけ出し、重要な情報を忘れてしまう前に記憶していけます。
例えば……
【漢字や英単語などの単語リストを作ります】
(表に問題、裏に答えというような感じで、すぐに覚えられるようにしておきます)
登下校中の立ち止まっている時や電車内、学校の休み時間など、合間の時間を見付けては暗記リストを見るクセを付けて、忘れてしまう前に繰り返し記憶できるように訓練しましょう。
2-2.記憶すべきものは6回転方式で覚える
6回転方式というのは、記憶力アップ法のところでもお話しました反復法と考え方は同じで、最低でも5回以上は繰り返し思い出していく訓練です。
先ほど作った暗記リストを用いて、記憶すべきものを6回に分けて覚えていきます。
この理論は、【3-1忘却曲線】を基に考えられた訓練方法です。
例えば・・・
・1回目:
暗記リストを作ったその日に記憶します。できれば就寝前などにおこなうと、記憶が定着されやすいです。
・2回目:
次の日に行います。この時点で記憶しているものは軽めに、記憶していないものはしっかりと覚えていきましょう。
・3回目:
3日後に行います。3回目ですから記憶する量は、少なくなってきているでしょう。まだ記憶できていないものを、重点的に覚えましょう。すでに記憶しているものは、流す程度にしておきましょう。
・4回目:
1週間後に行います。4回目ですから記憶する量は、さらに少なくなっているでしょう。暗記も楽になってきていますが、それでも記憶できていないものは、重点的に覚えるようにしましょう。記憶しているものは3回目と同様に流す程度にしましょう。
・5回目:
2週間後に行います。5回目ですからほとんどのことは記憶しているでしょう。それでもこの時点で記憶でできてなければ、より重点的に覚えましょう。記憶しているものはさらっと流しましょう。
・6回目:
1ヶ月後に行います。もう6回目ですから確実に記憶できているでしょう。しっかりと記憶が定着されていると思います。
もし、ここまでやっても記憶できていなければ、再度覚えられていないところだけを抽出して、リスト化して訓練します。
これを記憶できるまで、何度も繰り返し訓練して記憶力を上げていきます。
2-3.記憶力の訓練には適度な休息も大切
試験勉強などをおこなう人は、夜中まで徹夜で勉強したり長時間の勉強をおこなったりする人も多いと思います。
しかし、体は頑張れているつもりでも、脳の集中力というのは意外に長くは持続できないのです。
そんな時に試験勉強や記憶力アップの訓練をしても、脳に定着しずらい状態で、あまり効果もありません。
一般的に集中力が続く目安は・・・
【15分~90分ぐらい】と言われています。
そのため長時間の勉強をおこなう時は・・・
【必ず1時間に1回5分~10分の休憩時間】を取るようにしましょう。
また、脳に対してインターバルを取るように勉強をした方が、記憶の定着率が良く、記憶力アップに効果的であると言われています。
3.記憶力アップのために知っておくべき記憶の知識
記憶力を訓練していくためには「記憶」の知識について知っておくのも大切です。
ここからは、記憶力をアップさせるために知っておくべき記憶の知識をご紹介します。
3-1.忘却曲線
正式名称を「エビングハウスの忘却曲線」と言います。
エビングハウスの忘却曲線とは、心理学者のヘルマン・エビングハウスが導き出したもので、人間の脳に関する「忘れる仕組み」を、曲線化したものになります。
そもそも人は記憶したことを、永遠に記憶し続けていられるわけではありません。
【人は記憶してから20分後には、覚えたことの半分近くを忘れています】
忘却曲線を基にして考えると・・・
・最初に記憶した時を100%だとした時に、人はそこから20分後には記憶した情報を42%忘れてしまっている
↓
・1時間後には、記憶した情報を56%忘れてしまう
↓
・1日後には、記憶した情報を74%忘れてしまう
↓
・1週間後には、記憶した情報を77%忘れてしまう
↓
・1ヶ月後には、記憶した情報を79%忘れてしまう
このように個人差はありますが、人の脳というのは意外と記憶した情報をほとんど覚えていません。
記憶してからからわずか20分後には、約4割のことを忘れてしまい、1ヶ月後には約8割の記憶を忘れてしまいます。
そのため記憶力を上げるには、繰り返し訓練しておく必要があるのです。
3-2.記憶の種類
記憶というのはそれぞれ・・・
・感覚記憶
・短期記憶
・長期記憶
という3つの種類に分かれています。
それぞれの種類の特徴についてご紹介していきます。
3-2-1.感覚記憶
「感覚記憶」は、人の五感と呼ばれる「視覚」「嗅覚」「味覚」「聴覚」「触覚」にある感覚器官で、約1秒程度記憶する機能です。
よく目に残像が残るという現象がありますが、これは視覚である目の感覚器官が「感覚記憶」として、目に記憶されて起こる現象になります。
また、目の感覚記憶でいうと・・・
【目は一瞬の内に、4つのものまでなら記憶することができます】
※例
「1267」という4つの数字があった場合に、これは一瞬で記憶できます。
「1267358」という7つの数字があった場合は、一瞬では記憶できないため、
無意識のうちに「1267」と「358」というふうに、分けて記憶されていきます。
3-2-2.短期記憶
「短期記憶」は、感覚記憶で覚えきれない情報を、一定時間貯蔵しておく「短期貯蔵庫」のような機能です。
今記憶した情報をすぐに使いたい時などに、その情報を短期貯蔵庫から引き出して、行動や考えに使用する仕組みになっています。
ただし短期記憶は、記憶したことを短期貯蔵庫に貯蔵しておける時間が・・・
【15秒~30秒以内であるため、長期的に記憶しておけません】
3-2-3.長期記憶
「長期記憶」は、短期記憶の中で特に重要な記憶を、繰り返し思い出しながら覚えることで、半永久的に貯蔵しておける「長期貯蔵庫」のような機能です。
記憶力をアップさせるという点に関して言えば、この長期記憶が一番重要な要素になってきます。
また、長期記憶の中でも2種類の記憶に分けられます。
①宣言記憶
言葉や表現に関わる記憶で、その中でも2種類に分けられます。
勉強などに関わってくる記憶は、こちらの方です。
(1)エピソード記憶
過去の思い出などの記憶になります。
(2)意味記憶
一般的知識の記憶になります。
②手続記憶
運動などの体を動かす技術的な記憶になります。
スポーツなどに関わってくる記憶は、こちらの方です。
3-3.記憶のキャパシティーに限界はない!
人の脳が記憶できるキャパシティー(容量)は、あなたが思っているよりも遥かに莫大な容量です。
例えるなら、新聞1部(文字数約40万字)で考えた時に、約1950万部という数字になり、約5万年分の新聞を情報として入れられる容量が人の脳にはあると言われています。
主に、これだけの容量を記憶できるのは、長期記憶だけになります。
そのため、脳の容量を活かして記憶力をアップしていくためには、いかにこの長期記憶として記憶させていくかが、記憶力のアップには重要になります。
3-4.人の性格がそれぞれ違うように脳もそれぞれ種類が違う
よく人それぞれ見た目や性格が違うという表現をする時に、十人十色という言葉を使いますが、この言葉は脳にも当てはまります。
脳の知性には8つの種類があると言われています。
これは、認知心理学者であるハワード・ガーナーの「知性の多重構造」の考えを基にして、証明されています。
・言語的知性(言葉関係) ・博物学的知性(視覚や視点) ・空間的知性(位置・速度)
・論理数学的知性(計算・暗記) ・身体運動的知性(姿勢・運動)
・音楽的知性(音楽関係) ・社会的知性(人間関係) ・感情的知性(感情の制御)
実際に、記憶力と知性は関係がないように思えますが、言語的知性の人は国語などの言葉の能力に優れていて、論理数学的知性の人は計算などの数字の能力に優れています。
このように、自分の知性タイプを知っていれば、得意なもの不得意なものが明確になり、より効果的な訓練で記憶力アップがおこなえます。
認知心理学者で、ハーバード大学教育学大学院教授。
芸術に関する教育活動を推進する、ハーバード・プロジェクト・ゼロの共同指揮者。
3-4-1.言語的知性(言葉関係)
言語的知性とは、言葉を話したり文章を書いたりするなど、特に言葉に関する分野を記憶する能力に優れています。
この知性に優れている人は、人を説得する時などに、その記憶した言葉を効果的に使いこなしていけます。
*言語的知性に優れた人が好きな行動
・文字や文章を書く
・本を読む(特に文章の多い小説など)
・人と話す
*言語的知性に優れた人の特徴
・国語が得意な人が多い(文章を理解したり漢字を覚えたりするなど)
・人名や地名、知人の誕生日などを記憶するのが得意
・他の人がすぐに忘れてしまうような何気ない会話の言葉でも、記憶している場合が多い
3-4-2.博物学的知性(視覚や視点)
博物学的知性とは、自分の視覚に入った対象物の形態やパターンを瞬時に理解し、認識する能力に優れています。
この知性に優れている人は、認識した対象物の違いや共通点を見つけやすいという特徴があります。
*博物学的知性に優れた人が好きな行動
・疑問に思ったことを追求する
・人間や動物の行動を観察する(動物好きという人も多い)
・地理や気象を勉強する
*博物学的知性に優れた人の特徴
・記憶した様々な情報を自分の視点で整理し、活用していける
・ある情報に対して別の情報を上手く活用できる応用能力が高い
3-4-3.空間的知性(位置・速度)
空間的知性とは、目の前にある空間または空間の中にある物(情報)を的確に認識でき、それを頭の中で自由に転換する能力に優れています。
この知性に優れている人は、空間の中にある物がどのような位置にあって、どのような速度で関わっているのかを敏感に感じ取れます。
*空間的知性に優れた人が好きな行動
・図形を描いたり絵を描いたりする
・ゼロの状態から物を設計したり組み立てたりする
・想像したり空想したりする
*空間的知性に優れた人の特徴
・空間認知力に優れています
・認識した図やグラフの情報を瞬時に理解し、記憶していけます
3-4-4.論理数学的知性(計算・暗記)
論理数学的知性とは、物事を論理的に考えていき、抽象的な問題(考え)を明快にする能力に優れています。
この知性に優れている人は、数学における数字や記号を論理的に理解して、それを瞬時に操作していけます。
*論理数学的知性に優れた人が好きな行動
・計算や暗算する(数字に関わる内容が全般的に好き)
・他の人に質問する
・目的の意図が明確なものを実験、研究する
・物事の規則性(パターン)や関係性を調べる
*論理数学的知性に優れた人の特徴
・数学(理数系)が得意な人が多い
・問題の整合性を見つけ、何が一番最適なのかを考えつく問題解決能力が高い
3-4-5.身体運動的知性(姿勢・運動)
身体運動的知性とは、身体の姿勢や運動(動き)の状態を記憶し、その記憶を基に身体を上手くコントロールする能力に優れています。
この知性に優れている人は、目の前の動きを瞬時に記憶して、それと同じように行動する(真似をする)能力が高いです。
*身体運動的知性に優れた人が好きな行動
・運動(スポーツ)する
・手や足を使って(体を動かす)おこなう作業
・人の動きを真似する
*身体運動的知性に優れた人の特徴
・一般的に見て「運動神経が良い人」が多い
・手先を使う細かい作業が得意な「手先が器用な人」も多い
3-4-6.音楽的知性(音楽関係)
音楽的知性とは、聴いた音楽を理解し、記憶する能力が高く、その記憶を基に演奏したり歌ったりする能力に優れています。
この知性に優れている人は、様々なメロディーやリズム、音質などを認識して、オリジナルの音楽を作りだしたり表現したりできます。
*音楽的知性に優れた人が好きな行動
・歌ったり楽器を演奏したりする
・音楽を聴く
・自分で音楽を作り出す
*音楽的知性に優れた人の特徴
・絶対音感を持っている可能性が高い
・人が話す言葉や周囲の音に対して敏感に反応してしまう
・文章を覚える時に、自分なりのメロディーをつけて記憶できる
(中には文章を見るだけでメロディーが浮かんでくる人もいるそうです)
3-4-7.社会的知性(人間関係)
社会的知性とは、社会の中で構築される人間関係においての記憶力や理解力が高く、それを基にして適切な社会行動をおこなえる能力に優れています。
この知性に優れている人は、相手のちょっとした表情や声、行動などに敏感に反応するでき、他人の気持ちや感情、モチベーションの変化を見分ける能力が高いです。
*社会的知性に優れた人が好きな行動
・たくさんの友達と触れ合う
・様々な人たちと会話する
・みんなで協力して何かを成し遂げる
*社会的知性に優れた人の特徴
・社会性や協調性が高い
・コミュニケーション能力が高い
・周囲の人や状況を見て、今自分が何をするべきなのか的確に判断できる
3-4-8.感情的知性(感情の制御)
感情的知性とは、自分や他人の感情を読み解き、それを記憶していきながら、自分の感情を適切にコントロールする能力に優れています。
この知性に優れている人は、自分の性格について的確に把握でき、それを考慮した行動をとっていけます。
*感情的知性に優れた人が好きな行動
・自分の関心事をとことん追求する
・常に自分のペースで行動し、取り組む
(一言でいうとマイペースな人と言えるでしょう)
*感情的知性に優れた人の特徴
・自分の性格を理解し、自分のスタイルで行動できる
・周りの意見に流されず、自分の意志を貫ける
・自分で関心を持ったことは、結果が出るまで追求し続けていける
4.<まとめ>
ここまで、記憶力を訓練するための、記憶力アップ法や対策についてお話してきました。
書き出しのところでも言っていた通り、訓練という言葉を使っていますが、それほど大変なものではなく、今すぐにでも記憶力アップのために取り組める訓練ばかりだったと思います。
知性タイプや自分の取り組みやすい記憶力アップ法を見つけ、ベストな記憶力アップを目指してみてください。
また、記憶力をアップさせるには精神的な面も影響してきますので、体調などを整えて、日頃の訓練に取り組まれてくださいね。
【参考書籍】
・髙嶌幸広『一生つかえる記憶力が3週間で身につく本』明日香出版社、2011