フリースクールとは、何らかの事情で小学校・中学校・高校に通いたくない子供たちが通う民間の教育機関です。知らない方もまだまだ多いようですが、このフリースクール、今とても注目されています。
「子供が不登校になってしまった」
そんなとき、多くの親御さんが「子供をフリースクールに通わせてみようかな」と考えるようです。
しかし、フリースクールの利用をいざ考えてみると、
- どんな子供が通っているのか
- どんな授業をしているのか
- どれくらいお金がかかるのか
など、気になることがたくさん出てくると思います…。
そんなあなたのために、このページでは「フリースクールがどんなところなのか」を中心に詳しくお話ししていこうと思います。少しでも良いので、子供について悩んでいるあなたの助けになれると嬉しいです。
では、いってみましょう!
目次
1. フリースクールってどんなところなの?
まずはフリースクールの概要をずらーっと見ていきます。
フリースクールに通っている子供・授業・費用などについて触れていくので、ぜひ参考にしてみてください。
1-1. フリースクールには、どんな子供が通っているの?
フリースクールには、様々な事情で一般の学校を休みがちな子供、または休んでいる子供たちが通っています。
例えば、
- もともと通っていた学校で友達関係が上手くいかなかった
- いじめを受けた
- 勉強についていけなかった
などで精神的ストレスを抱え、不登校になってしまった子供たちがフリースクールにはいます。
また、フリースクールの中には、知的障がい、身体障がい、発達障がいなどを抱えている子供たちがいるところも。
さらに、「小学生と中学生のみ」「高校生のみ」と制限を設けているスクールもありますが、勉強がしたい大人の入学を受け付けているところもあります。
1-2. フリースクールの授業はどんな感じ?
フリースクールの多くは、地域のボランティア活動に参加したり、スクールのイベント行事に参加したりと、一般的な学校に比べると体験的な授業が多い傾向にあります。(中には、学校で習うような勉強はせず、体験学習だけのフリースクールもあるようです)
そして、フリースクールでの授業は、一般的な学校に比べると少人数制のところが多いようです。マンツーマンで勉強を教えているフリースクールもあります。これなら、先生たちもしっかりと各生徒を見てくれそうですね。
1-3. フリースクールの費用はどれくらいなの?
文科省によるとフリースクールに支払う会費は平均3万3千円/月だそうです。
しかし、フリースクールの費用は、授業内容や通学する頻度(通学タイプ)、フリースクールが学校と連携していて「転校」する場合などで大きく異なるということを知っておきましょう。
安めのフリースクールですと、入学金や授業料がかからず、5千円/年の教材費のみのところも。高めのフリースクールですと、入学金30万円・教材費1万円・授業料40万円/年・その他の費用が8万円かかるところもあります。
1-4. フリースクールに通う場合、小学校・中学校・高校の卒業資格はどうなるの?
フリースクールに通った場合、「卒業資格がどうなるのか」がとても気になると思います。義務教育である小学校・中学校と、義務教育ではない高校とでは卒業資格の扱いが異なるので、それぞれ見ていくことにしましょう。
1-4-1. 小学校と中学校の場合
小学校や中学校の場合は、もともと通っていた学校と交渉をし、学校長から許可をもらうことができれば、フリースクールに通った日を出席扱いにしてもらえます。つまり、もといた小学校・中学校に籍を置いたままフリースクールに通えるということです。そして、卒業資格については、もともと通っていた学校からもらうこととなります。
しかし、通うフリースクールによっては、スクールが持っている小学校や中学校と連携しているところも。そのような場合は、もといた学校から転校することとなり、卒業資格も転校先の学校からもらいます。
1-4-2. 高校の場合
高校の場合は義務教育ではありませんので、小学校や中学校とは少し事情が違います。
高校の場合はフリースクールに通っていても、もとの学校からの卒業資格はもらえません。
しかし、高校卒業の資格がないと、大学受験ができなかったり、履歴書に書けなかったりと色々と不安ですよね…。
では、フリースクールを利用する子供たちはどうやって高校の卒業資格を手に入れているのでしょう?ここでは2つの方法をご紹介していきます。
1つ目は「通信制高校と連携しているフリースクール(サポート校)を選ぶ」という方法。
フリースクールの中には通信制高校と連携し、通信制高校を卒業するための学習をサポートしてくれるサポート校があります。もちろん通信制高校を無事に卒業すると高校卒業の資格がもらえます。
そして2つ目は「高等学校卒業程度認定試験(高卒認定試験)の合格を目指してフリースクールで勉強を教えてもらう」という方法です。
「高卒認定試験」とは実際にどこかの高校を卒業していなくても、「高校卒業程度の学力がありますよ」と国に認めてもらうための試験です。この高卒認定試験に合格すると、将来就職活動をする際など、履歴書に記入することができます。また、高卒認定試験に合格していると、大学受験もすることが可能です。
1-5. フリースクールで、高校受験や大学受験対策はできるの?
フリースクールの中には、受験対策用コースを用意し、合格に向けて勉強を教えてくれるスクールもあります。
フリースクール入学前から受験の意思が子供にある場合は、受験対策可能なフリースクールを探しましょう。また、受験したい学校まで決まっている場合は「〇〇高校(〇〇大学)に受験したいんですけど」とスクール側に相談すべきです。
そして高校受験をする場合は特に「中学校の内申点がどうなるのか」が気になると思います。
もといた学校に籍を置いてフリースクールに通う場合は、定期テストだけ籍を置いている中学校のものを受けて、内申点の評価をしてもらうケースが多いようです。しかし、中学校によっては対処法が異なる可能性もあるため、フリースクールに通う場合は、「内申点をどうやって取ればいいのか」を中学校側にきちんと相談するようにしましょう。
1-6. どうやったらフリースクールに入れるの?
ほとんどのフリースクールが、選考方法として「面接」を取り入れています。中には「面接+作文」を行っているスクールも。これは、入学希望者がどんな状況なのかを知るために実施されているようです。
また、学力試験を実施していないスクールが多いため、「勉強ができないからどこのフリースクールにも入れない」という事態にはならないと思います。
2. フリースクールの通学タイプ
フリースクールには色々な通学タイプ(通学する頻度)があります。
子供の様子を見て、どの頻度が合うのかを考えてみましょう。
2-1. フリースクールの通学タイプ【宿泊型】
フリースクールの中には、寮を持っているスクールもあります。
「今まで過ごしてきた環境をガラッと変えたい」「規則正しい生活習慣を手に入れたい」という子供が宿泊型フリースクールを選ぶようです。また、同じ寮の子供と長い間一緒に過ごすため、自然と人付き合いも上手にできるようになります。
2-2. フリースクールの通学タイプ【全日制】
一般的な学校のように週5日通う全日制タイプ。
全日制タイプを選ぶ子供は「しっかりと勉強したい」「仲の良い友達が欲しい」と思っている子が多いようです。
中には週5日スクールに通うことが億劫に感じる子供もいるようですが、各フリースクールの授業内容は特徴があってとても面白そうです。通う日数だけでスクールを決めるのではなく、授業内容も必ずチェックするようにしましょう。
2-3. フリースクールの通学タイプ【週に数回通う】
「今は子供の心身がとても心配」という場合は、週2・3回通えるスクールも視野に入れましょう。子供は自宅で自分の時間をしっかりと確保できますし、フリースクールに行くと友達や先生にも会うことができます。
2-4. フリースクールの通学タイプ【自宅学習】
「外に出るのが怖い」「人付き合いが極度に苦手」というスクールに通えない子供が自宅学習を選びます。フリースクールによっては、スタッフが自宅訪問をし勉強を教えてくれたりします。
3. フリースクールを選ぶ5つのステップ
フリースクールをインターネットや資料だけ見て決めてしまうのは厳禁!
フリースクール選びに失敗すると、最悪の場合、子供がフリースクールへも通わなくなってしまいます。
そんな事態を避けるためにも、フリースクールを選ぶ際は以下の5テップを行うのがおすすめです。
3-1. ステップ1:子供の将来にあったフリースクールをインターネット・資料などで探す
親御さんがフリースクール探しをする際は、子供から「将来どうしたいのか」をきちんと聞いてから探すようにしましょう。
例えば、もともと通っていた学校への復帰を目指すのであれば、復学実績が多数あるフリースクールを、受験させたいのであれば受験に強いフリースクールがよいでしょう。
また、子供が将来の夢を叶えられるよう、美術や音楽・料理の授業に力を入れているフリースクールを探すのもいいですね。
(私は、「全国フリースクールガイド 小中高・不登校生の居場所探し(発行:学びリンク)」という本を持っていますが、全国のフリースクールの授業内容・費用・入学方法などが詳しく載っていてとても分かりやすい本です。また、年度ごとに出ている本なので、最新情報を手に入れることができます。フリースクール探しの際は購入してみるのもおすすめです)
3-2. ステップ2:気になるフリースクールの資料請求をする
いくつか気になるフリースクールを見つけたら、資料請求をして内容を見比べてみましょう。子供と一緒に資料を見て、意見をもらいながらフリースクール候補を絞るのもいいかもしれませんね。
小規模なフリースクールの場合は資料がないかもしれませんが、中規模・大規模なスクールであれば資料を用意しているところが多くあります。
3-3. ステップ3:フリースクール側と話す
希望のフリースクールが決まったら、フリースクールに問い合わせ、親御さん(可能な場合は子供と一緒に)がフリースクール側と話しましょう。
どんな先生が生徒を見てくれるのか・フリースクールを巣立った生徒の進路・授業内容など気になる点は積極的に聞くようにしましょう。
3-4. ステップ4:フリースクールの体験入学を子供に受けてもらい、合うかどうかを確かめる
ほとんどのフリースクールが体験入学を受け付けています。
実際に子供に体験入学を受けてもらい、その感想を聞きましょう。
3-5. ステップ5:通うフリースクールの決定
体験入学を受け、「ここなら我が子も大丈夫」と感じた場合は、フリースクール入学のための手続きを進めましょう。
4. フリースクールと、適応指導教室・通信制高校の違い
フリースクールを選ぶ際に「フリースクールと適応指導教室(または通信制高校)ってどう違うの?」と疑問に思ってしまう方がいるようです。
適応指導教室・通信制高校がそれぞれどんなものなのかを確認し、我が子に合うのはどれなのかを考えてみましょう。
※実際に通うのは子供です。「ここにしなさい」と親御さんが決めるのではなく、子供の意見もきちんと反映するようにしましょう。
4-1. 適応指導教室(教育支援センター)とは
適応指導教室へは小学生・中学生が通うことができます。
教育委員会が学校に通えない生徒を支援する場所として設置しており、フリースクールと違って基本的に費用がかかりません。
基本的には「休んでいる小学校・中学校への復帰」を目指し、適応指導教室に通っていれば休んでいる小学校・中学校は出席扱いになります。
また、自由度がフリースクールと比べて低いので、特殊な授業は少ないです。
4-2. 通信制高校とは
通信制高校は公的に認められた「高等学校」で、無事に卒業することができれば当然、高校卒業資格をゲットすることができます。
しかし、学校に行く頻度が少なく、自宅学習がとても大切になってきます。
インターネット学習で勉強をサポートしてくれる高校もあるようです。
「勉強面が不安で通信制高校を卒業できる自信がない」という場合は、通信制高校と提携しているフリースクール(サポート校)を選び、通信制高校卒業を目指してみるのも良い手段です。
5. 子供の精神的SOSにはどうやって向き合えばいいの?
フリースクールや適応指導教室に通う子供たちは、もともといた学校で精神的ストレスを抱えてしまった子が多いです。
子供が精神的ストレスを抱えてしまった場合、親御さんはどのように向き合っていけばいいのでしょう?
ここでご紹介するのは「子供の話を上手に聞く方法」です。
子供の話をちゃんと聞くことで、子供は安心感を得られストレス発散にもなりますし、親御さんも子供から話を聞くことでストレスの原因を知ることができます。
では、「子供の話を上手に聞く方法」をみてみましょう。
5-1. ステップ1:「自然に」話しかける
まず、話を始める際は「自然に」を心がけましょう。
「お母さん、あなたのことが心配で。何があったのか詳しく教えて」と直球で聞くと、かえって子供は話しづらくなってしまったり、親に対して「うざい」などの嫌悪感を持ってしまいます。
「昨日観たテレビ面白かったね」「このお菓子おいしいね」など、自然な会話からスタートしましょう。その後で「最近なんだか暗いけど、大丈夫?どうかしたの?」など、子供の変化に気付いているということを伝え、子供が話しやすい雰囲気を作ります。
5-2. ステップ2:感情で答えてあげる
また、子供が話し出したら話を遮らずに「うんうん」「そうだね」と相槌を打ちながら、一通り話を聞いてあげましょう。また、子供が話し終わった後に「だってそれはあなたがこうしたからでしょ?」と責めてしまうのも厳禁です。子供の気持ちになり、「それはとても辛いよね」「しんどかったね」と感情で子供の言葉に寄り添いましょう。
まずは、子供の本音を引き出して、子供が一人で抱えているしんどさを共有することが大切。そうすることで詳しい状況が見えてきます。
5-3. ステップ3:解決策を探す
子供の本音を聞けたら、解決策を子供と一緒に探しましょう。
一方的に親御さんが「こうしなさい」というのではなく、このときもきちんと子供の意見を聞いてアドバイスをしてあげてください。
※子供がどうしようもなくふさぎ込んでしまったり、自暴自棄になってしまっている場合は精神科を受診しましょう。
精神科を受診するとなると「なんだか嫌だ」と思ってしまう子供・親御さんがいるかもしれませんが、精神科医は精神のプロフェッショナルです。当然、私たちよりも豊かな知識をもっています。症状がさらに悪化してしまう前に、勇気を出して受診してみることをおすすめします。
6. まとめ
以上、フリースクールについてお話ししました。
「子供が学校に通えない」という状況は、子供だけでなく親御さんにとっても、すごく辛い問題だと思います。
しかし、子供を強く責めたりせずに、子供が抱えている問題を解決できるような場所を一緒に探してあげましょう。
そうすることで、子供もたくさん笑顔を見せてくれるようになると思います。
【参考書籍】
・学びリンク編集部 『小中高・不登校生の居場所探し 2017-2018年版 (全国フリースクールガイド) 』学びリンク、2017
・奥地 圭子『フリースクールが「教育」を変える』東京シューレ出版、2015
・富田 富士也『ストレスから子どもを守る本』PHP研究所、2000