「ちゃんと食べなさい!!」
子供の偏食に悩み、イライラして強く叱ってしまったことはありませんか?
子供の健康を願うからこそ、好き嫌いなく食べてほしいですし、たくさん食べてほしい。
あなたの気持ちはわかりますが、怒鳴ったり叱ったりしてしまうと、子供は「食事=つらい時間」と感じてしまいます。
それでは子供の偏食はいつまでも治るどころか悪化してしまうかもしれません。
もしあなたが子供の偏食で悩んでいるのなら、子供の偏食は味の好き嫌いで起こるものではなく、「食べる」経験が足りていないことや食事が楽しいかどうかなどが原因だと知ってください。
子供の偏食を直すためには、食事を楽しい時間にすることが最も大切なことです。
子供を叱るのではなく、なぜ好き嫌いがあるのか、なぜ遊んでしまうのかを考え、それらを対策することで子供と一緒に楽しい食卓をつくっていきましょう。
そして、子供のうちに「おいしい」味をたくさん覚えて、大人になってからも子供が豊かな生活を送れるようにサポートしていきましょう。
今回は「子供の偏食について」紹介します。
1.子供の偏食について
偏食とは、単に「好き嫌いが多い」ということではありません。
魚しか食べられない、野菜しか食べられないなど、食べられる食品の選択肢が極端で「必要な栄養素に偏りがある食事」のことを指します。
「好き嫌いをなくしてたくさん食べてほしい」と考えている人は多いと思いますが、重要なことは「好き嫌いの多さ」ではなく「栄養をバランスよくとれているか」とうことです。
それを踏まえて、子供の偏食について知っていきましょう。
1-1.子供の偏食と体への影響
乳幼児期は、体の発育とともに運動機能や神経機能が急速に発達します。
そのため、乳幼児期に十分なエネルギーや栄養素をとることが出来なければ、発育・発達に影響が出てしまうことがあります。
例えばですが、身長が伸びる遺伝子要素を持っていたとしても、必要な栄養が足りていなければ、骨格の形成に影響が出てしまいあまり身長が伸びないかもしれません。
5大栄養素である「炭水化物・たんぱく質・脂質・ビタミン・ミネラル」はどれも必要なものですが、子供の食事でさらに意識して摂取してほしい栄養素は「鉄分・亜鉛・脂肪(不飽和脂肪酸)・カルシウム」の4つです。
この4つは脳の発達や骨格の形成に欠かせません。これらの栄養素を意識して摂取できれば、自然とバランスの良い食事になるでしょう。
1-2.子供の偏食と味覚への影響
味の好みの基礎は3歳くらいまでに決まるといわれています。
また、子供の頃にすり込まれた味は大人になってからの好みに深く関わるため、子供のうちにさまざまな味を経験することが大切です。
ですから、あなたの子供が偏食で食べられるものが少ないのであれば注意してください。
無理矢理食べさせることは絶対にしてはいけませんが、子供のうちにさまざまな味を体験できる環境をつくりましょう。
食べ物の情報を保存する場所(脳)は、心に感じる「快」「不快」や「喜怒哀楽」といった感情に関わる部分で、脳のこの部分は、生まれてから急速に発達して、3歳くらいまでに完成に近づきます。
そのため、子供の味覚を育てるには「3歳までにおいしい味のすり込みをすることが大切」といわれています。
1-3.子供が偏食になる2つの理由
子供が食べ物を嫌がり偏食になってしまう理由は大きく分けると2つあります。
それは、防衛本能と環境的要因です。
防衛本能 ~食べることへの警戒心~
子供は生まれたときから味覚を持っていますが、その味覚はとてもシンプルです。
体に必要な味(甘味、塩味、うま味)を「おいしい」、体に危害がありそうな味(酸味、苦味)を「まずい」と本能的に感じています。
そのため、「食べる」という経験が少ないうちは、すぐに口から出してしまったり、食べることを嫌がってしまったりするのです。
子供にとって「食べる」ということは未知へのチャレンジです。
とても勇気がいることですから、せかさずに見守っていきましょう。
<子供が「おいしい」と感じる味>
【甘味】エネルギーの源となる糖分
【塩味】体液のバランスを取るのに必要なミネラル
【うま味】生きていくうえで不可欠なたんぱく質
<子供が「まずい」と感じる味>
【酸味】食べ物が腐っている時などに、酸っぱさがあることから警告として捉える
【苦味】多くの毒物が苦いため、不快な味だと感じる
環境的要因 ~子供は味以外にも気になることがいっぱい~
- お腹が空いているか
- 一緒に食べているか
- 楽しい食卓か(無理やり食べさせたり怒ったりしていないか)
- 子供の成長に合っているかたさ、量、味つけのものが用意されているか
子供の味覚は感情と深く結びつけられて記憶されていきます。
ですから、「お腹が空く→食べる→満足感を得る」や、「親と一緒に食べた」「楽しくご飯を食べた」といった良い環境が子供の「おいしい」を育てていきます。
逆に「お腹が減っていないのに食べなきゃいけない」「ひとりで食べるのはつまらない」「怒られた」といった悪い印象があったり、「食べづらい」「見た目がイヤ」といったちょっとしたイヤなことがあったりするだけでも子供はその食べ物を嫌いになってしまいます。
2.子供の偏食と7つの「(こ)食」
子供の偏食を説明する上で、7つの「(こ)食」というキーワードがあります。
7つの「(こ)食」とは、
<孤食>、<子食>、<個食>、<固食>、<小食>、<濃食>、<粉食>
という、それぞれの(こ)にまつわる7つの食べ方のことです。
それぞれの「(こ)食」について、ご紹介していきます。
2-1.孤食|1人で食べる
子供が「食事=寂しい、つまらない」と思ってしまわないように、孤食にならないようにしましょう。
なぜなら、先に述べましたように子供の味覚と感情は深く結びついているからです。
子供が偏食にならないようにするには「食事をおいしい」と思える環境づくりが大切で、「食事は楽しいもの」でなければいけません。
また、孤食に慣れてしまうと、社会に出たときに人と食事することが苦手になってしまうことがありますから、協調性を育てるためにも孤食は避けていきたいものです。
2-2.子食|子供だけで食べる
子供は食べ物に対して警戒心があるため、初めての食品には慎重になりますし、食べるのを嫌がってしまいます。
子供は親を見て育ちますから、親が子供の前で食べて「これはおいしいもの」と教えてあげることが大切です。
子食を避け、親が子供の見本になってあげましょう。
2-3.個食|食べているものがバラバラ
一緒に食卓を囲んでいても食べているものがみんなバラバラの食事を個食といいます。
家族それぞれが別のものを食べていると、子供は「自分も好きなものを食べたい!」となりますよね。
そうなると、好き嫌いは増えてしまいますし、偏食になってしまいます。
そればかりか、我慢ができないわがままな子供になってしまうことでしょう。
個食は子供から“好きなもの以外を食べる機会を奪ってしまう”のです。
ですから、家族みんなで同じものを食べることはとても大切です。
子供は親がおいしそうに食べている姿を見て「自分も食べてみたい」と思います。
子供の成長に合わせた食事をつくることは大事ですが、できるかぎり同じものを食べるようにしてくださいね。
2-4.固食|同じものばかり食べる
好きな食べ物ばかり食べるなど、いわゆる「ばっかり食べ」のことを固食といいます。
同じものばかり食べているわけですから、栄養は偏ってしまいます。
「ばっかり食べ」はいわば「マイブーム」です。
子供は大人よりも気分屋さんですから、食べ過ぎて「しばらくは食べたくない」なんてこともあります。
好きなものを無理に遠ざけるのではなく、“食べてくれないよりは安心”と思うようにしてください。
好きなものを食べさせて、子供の気分が良くなったところで「一口だけこれを食べてほしいな」と少しずつ他の食べ物にも慣れてもらいましょう。
しかし“いつまでも好きなものだけしか食べない”、“好きなものがないと何も食べない”というのであれば話は別です。
子供が泣いても騒いでも、「ないものはない!」という姿勢を貫かなければいけないことがあります。
「ない」と言っていたものが「ぐずったら出てきた!」となれば、我慢できない子供になってしまいます。
そうならないためにも、「好きなものしか食べない子」は「好きなものに他の食品をうまく混ぜながら」食べれるものを増やしていけるように心がけていきましょう。
2-5.小食|食べる量が少ない
食べる量が少ないと、体に必要な栄養が足りなくなってしまい、成長に影響があります。
「できるだけ食べてほしい」という気持ちから、子供の好きなものばかりを食事に出してしまいがちですが、それでは味覚は広がりませんし、栄養が偏ってしまいます。
子供が小食になってしまう原因を、3つのケースに分けて紹介します。
①ミルクから離乳食に切り替えたとき
食べ物に対しての警戒心などが原因かもしれません。
子供は食べることに慣れていませんから、嫌がってなかなか食べてくれないということはよくあります。
食感や味つけを変えるなど工夫してみましょう。
②普段から食べる量が少ない
以下のような生活習慣が原因で小食になっている可能性があります。
- おやつの食べ過ぎや運動不足などでお腹が空いていない
- テレビをみながら食べているなど、食事に集中していない
- 疲れている、眠いなどの理由から食欲がない
起きる時間や寝る時間、食事の時間を決めて、規則正しい生活リズムをつくりましょう。
そして適度に運動して、お腹が空いた状態で食卓につくようにできるといいですね。
③普段より食べる量が減った
もしかすると、病気や虫歯が原因かもしれません。
子供は「ここが痛い」「ここが悪い」ということを的確に伝えることが苦手です。
普段はモリモリ食べる子が小食になったのならば、体の不調のサインかもしれませんから注意してください。
上記の3つのケースに心当たりがなく、食事の食感や味つけを工夫をしても小食なのであれば、もともと食べられる量が少ないのかもしれません。
体質はそれぞれ違いますから、子供が元気であればあまり神経質にならずに見守りましょう。
そして栄養のバランスがとれたメニューを心がけて、たくさん食べられたときには「たくさん食べてえらい!」とほめてあげてください。
そのときの喜びで、食べるのが好きになり、たくさん食べる子に育つことでしょう。
2-6.濃食|味つけが濃いものばかり食べる
偏食にならないようにするために、子供の味覚の幅を広げ「おいしい」をたくさん知ってほしいですよね。
ですが、濃い味つけのものばかり食べていると味覚が鈍くなってしまいますから、要注意です。
子供の味覚を育てるには薄味を心がけて、塩分濃度を気にかけましょう。
塩味がちょっと物足りないくらいが、ほかの味覚を敏感にします。
2-7.粉食|パンや麺類など粉から作られたものばかり食べる
粉から作られたパンや麺類はやわらかくて食べやすいですが、粉ものばかり食べていると「かむ力」が育ちません。
かむ力が育たないと、子供がいつまでたってもお肉が食べられないなど偏食につながってしまいます。
また、かまずに飲み込む習慣がついてしまうことことにも注意が必要です。
伝統的な和食は減少する一方で、ハンバーガーやピザといった、パンを主食とした食事やパスタなどの洋食が日本の家庭に浸透してきています。
一概には言えませんが、洋食は和食と比べると含まれている脂肪の量が多く、洋食中心の生活は生活習慣病につながりやすいと考えられています。
ですから、生活習慣病の予防という意味でも、パンやパスタといった粉ものではなく、ご飯を主食とした和食を食べていけるといいですね。
3.子供の偏食を直す5つのポイント
子供の偏食を直すには、5つのポイントに気をつけてください。
・食事を楽しくする
・食事に集中できる環境をつくる
・感情的に叱らない
・一口食べることができたらたくさん褒める
・「食べ物」への関心を高めてあげる
以上のポイントに気をつけながら、子供の偏食を直していきましょう!
3-1.食事を楽しくする
偏食を直すために何よりも大切なことは、食事を楽しい時間、幸せな時間にすることです。
これまで紹介してきたように、食べ物の味や匂いは、食べたときの感情と結びついて記憶されます。
例えば、誕生日など楽しい場面で食べたものは好きになりますし、子供の頃にたくさん食べたものは大人になってからも好きなままです。
逆に、叱られながら食べたものや無理矢理食べさせられたものは嫌いになりますし、食後に体調が悪くなったということがあれば「見るのもイヤ!」ということになってしまうでしょう。
味以外の要素が大きく関わっているので、子供の偏食を直したいのであれば、食卓はいつも楽しく幸せな空間でなければいけないのです。
ご飯を一緒に食べる、会話を楽しむ、笑顔があふれている、みんなおいしそうに食べている、そういった食卓にしていきましょう。
3-2.食事に集中できる環境をつくる
「遊ぶ時は遊ぶ」「食べる時は食べる」と、気持ちを切り替えて食事に集中できる環境をつくりましょう。
気持ちの切り替えができないまま食卓につくと、子供は「遊び食べ」や「ながら食べ」をしてしまいます。
食事に集中していないということは「食べることへの興味が薄れている」ということです。
「遊び食べ」や「ながら食べ」をしないように、食卓にはおもちゃやゲームを置かないようにしてください。
また、食事の時間を決めて「いただきます」「ごちそうさま」を習慣づけて規則正しい食生活にしましょう。
そうすれば、食べ物への興味・関心を高めることができ、さらには満足感・満腹感を得ることができます。
3-3.感情的に叱らない
一生懸命作ったご飯を投げたり、お皿をひっくり返されたりすると怒りたくなってしまいますが、決して感情的にならないようにしましょう。
「食べ物を投げてはいけません」「お皿を投げてはいけません」など、何がいけないことなのかをしっかりと伝え、食べ物を粗末にしないこと、物を大事にすることを教えることが大切です。
例えば“子供が満腹になると「食べ物」を「おもちゃ」にしてしまう”と気づけたなら、子供が食べ物やお皿で遊び始める前に片づけることができますよね。
また残されるのが嫌であれば、どのくらいなら子供が食べきれるのかを考えて、盛り付けることができます。
「ダメ!!」と叱る前に、予防線を張るようにしましょう。
3-4.一口でも食べることができたらたくさん褒める
初めてのものを食べたり苦手なものを食べたりしたら、大げさなくらい褒めるようにしましょう。
そうすると、子供はがんばった達成感や褒められる喜びを得ることができます。
また、親が喜んでいるのを見ると子供は「もっと喜んでほしい」という気持ちになります。
その気持ちが「食べてみよう」という気持ちになるのです。
子供の偏食は“子供だけが頑張って直すもの”ではありません。“子供と親が一緒に直していくもの”だということを忘れないでくださいね。
- 「一口だけでも食べてくれたら嬉しいな」とお願いする
- 「食べてくれなくてピーマンさんが寂しがってるよ」と食べ物の気持ちを伝えてみる
- 好きなものを食べて機嫌がよくなったところで「これも食べてね」と出してみる
このように、子供が「じゃあ食べてあげる」と思えるように導きましょう。
最初は嫌々かもしれません。しかしその一口が大きな一歩になるのです。
3-5.「食べ物」への関心を高めてあげる
食べ物への興味・関心を高めるには「体験」することが一番です。
子供と一緒に「食」に関わる体験をしてみてください。以下はその一例です。
食品にふれる機会をつくる
幼児期くらいの子供にとっては、食べ物はまだまだ未知のものです。
スーパーで買ってきたものを冷蔵庫に入れる手伝いをしてもらいながら、「これはピーマンだよ」「これはナスだよ」などと教えていきましょう。食べ物が載っている絵本などがあれば、それを見ながら実際の食品を触らせるのもいいでしょう。
一緒に料理する
1歳くらいから簡単な手伝いができるようになってきます。
「こねる」「丸める」「ちぎる」、ビニール袋に入れた食品や調味料を「もむ」など、手を使うことがおすすめです。
フルーツの盛り付けを一緒にするのもいいですね。
※一緒に料理をするときに気をつけたいことは「遊びの延長にならないようにする」ことです。
「手を洗う」「エプロンをする」などを習慣づけて、“これから料理だよ”と遊びと料理の区切りをしっかりとつけましょう。
「食」に関わる体験できる場所へ行く
種の植えつけや収穫、牛の乳しぼり、食品加工の工場など、全国には食に関わる体験ができる場所がたくさんあります。
4.子供の偏食の予防する2つのポイント
子供が偏食にならないように予防していくには、2つのポイントがあります。
それは、
・自分で食べる力を育てる
・栄養が偏らないようにする
というポイントになります。
この2つのポイントに気をつけながら、子供の偏食を予防していきましょう。
4-1.自分で食べる力を育てる
子供が偏食にならないように予防するためには、「食べたい」という気持ちを育てることが大切です。
1歳前後になると、子供は「自分で食べたい」と思うようになります。
しかし、子供は初めからスプーンやフォークをうまく使えるわけではありません。
うまく使うどころか、スプーンを持っていても、開いている手で食べ物をつかんでしまうことがありますよね。
床やテーブルに食べ物を落としてしまったり、手や口元をベタベタにしてしまったりすると「もっと上手に食べれるようになってほしい」と思ってしまいますが、ここで焦ってはいけません。
ある程度好きに食べさせた方が子供の「食べたい」気持ちが育ちます。
この時期の子供は好奇心旺盛ですから、どんどん手でつかませて、子供のペースで食べさせてあげてくださいね。
子供が手づかみで食べることは「食べる力」を育てるために必要です。
自分で口に運んでかじり取ることで、口に入るちょうどいい量を覚えますし、手や指などの機能の発達につながります。
最初は全部の指でつかむことが多いと思いますが、慣れてくるとつまむことができるようになり、少しずつスプーンなどを上手に使えるようになってくるでしょう。
<食べる力を育むポイント>
- 食事に手づかみできるメニューを入れる
- ある程度好きなように食べさせる
- 自分で食べることができたら褒める
ある程度好きなように食べさせてあげることはとても大切ですが、小さいときの習慣は大人になってからも残ります。
「ちゃんと座る」「食べるときは器からとる」「よく噛んで食べる」など、最低限のルールは小さいうちに習慣づけられるようにサポートしてください。
4-2.栄養が偏らないようにする
最初に紹介しましたが、偏食とは「必要な栄養素に偏りがある食事」のことです。
ですから、偏食を予防するには「どうやって栄養を摂るのか」を考えればいいのです。
例えば、“ご飯”の主な栄養素は炭水化物ですが、子供がご飯嫌いであれば、同じく主な栄養素が炭水化物である“うどん”を食べるようにするなど、1つの食品にこだわらずに同じ栄養素を持つ別の食品を食事に出してみましょう。
好きなものばかりを食べさせるわけにはいきませんが、子供にだって逃げ道は必要です。
まずは栄養をしっかり摂り、それから少しずつ食べられるものを増やしていきましょう。
5.偏食との向き合い方
子供の偏食を直すのは、なかなか難しいことでしょう。
ですが、そんな子供の偏食を直してあげられるのは、親であるあなただけです。
親として、子供の偏食についてどう向き合っていけばいいのか、一緒に考えてみましょう。
5-1.子供は好き嫌いがあって当たり前
「どうしてうちの子は食べてくれないの」と思っているのはあなただけではありません。
はじめは母乳やミルクしか知らない子供にとって、食べ物は未知のものですから、食べることを嫌がるのは当たり前のことです。
そこで知っていただきたいのは「味覚は経験と学習によって育つ」ということです。
初めてのものは誰だって警戒します。
しかし、繰り返し食べることで「これは安全なものだ」と受け入れるようになるのです。
日によって食べてくれたり、食べてくれなかったりすることがありますが、焦らなくても大丈夫。
根気よく子供の味覚を育てていきましょう。
※子供の好き嫌いに直結する行動
【好きになる行動】
・おいしそうに食べているところを子供に見せる
・食材に触れる機会をもたせて、安全なものだと認識させる
・「嫌い」を克服させるのではなく、「好き」を増やしてあげる
【嫌いになる行動】
・怒ったり叱ったりする
・無理やり食べさせようとする
5-2.なぜ嫌がるのかを見つける
子供は大人が思っている以上にデリケートです。
子供が食べるのを嫌がる理由は味以外にもあります。
例えば、「見た目がイヤ」「食べづらい」「色が怖い」などちょっとしたことが気になっているのです。
ですから、何が嫌で食べないのか、理由を見つけることが大切です。
理由がわかれば、調理法を考えることができるので、子供をよく見てあげてくださいね。
*子供が嫌がる味・・・苦い、酸っぱい、辛い(舌に刺激がある)
*子供が味以外で嫌がる要素・・・大きすぎたり細かすぎたりして食べづらい、食感、見た目や色、におい、など他多数
5-3.たくさんの「おいしい」を見つける
「1-3子供が偏食になる2つの理由」で紹介しましたが、子供の味覚ははじめのうちはシンプルで、「体に必要な味」「体に危害がありそうな味」の二択です。
しかし、成長すると「苦いだけだったピーマンが大好きになった」ということがありますよね。
それは、味覚が変わったのではなくさまざまな味を受け入れて楽しむことができるようになった、つまり“味の幅が広がった”ということです。
味の幅は学習によって広がり、豊かになります。
繰り返し食べることによって「これは食べていいもの」「これは食べてはいけないもの」と学習して、やがて「これは好き」「これは嫌い」というように好みができてきます。
本能的に「苦味がある=毒かもしれない」と思っていた食べ物を親や友達が食べているところを見たら「自分も食べてみようかな」と思い、実際に食べてみたら「苦いけどおいしい!」と感じることがあります。
このように子供はおいしい味を学習していくのです。
はじめは誰だって好き嫌いが多いものです。
「嫌いなものを1つ克服する」より、「好きなものを2つ増やす」ことができれば、食べられるものがどんどん増えていくことでしょう。
子供が「おいしい」と感じるものを見つけられるように、「子供が自然と手を伸ばしたくなるような楽しい食卓」をつくっていきましょう。
5-4.将来どんな子になってほしいか考える
子供の偏食と向き合うとき、大切なことは「今」ではなく「将来」だということを覚えておいてください。
栄養バランスを考えてご飯を作っても、好き嫌いで食べてくれないことがあると思います。
そんな時には「ちゃんと残さず食べなさい!」と強く叱ってしまうことがあるかもしれませんが、それでは食事嫌いになってしまいます。
いつか子供が親元を離れて一人暮らしを始めたとき、もしあなたの子供が食事が嫌いで、好き嫌いが多いままなら心配がつきません。
「食事が好きになるように」「自分で栄養バランスを考えられるように」なるために、「今」にこだわらず「将来」を見据えた食育をしていきましょう。
<将来を考えた食育>
- 叱らない
- どんな栄養があるか伝える
- 食事が好きになる工夫をする
5-5.がんばりすぎない
がんばりすぎてストレスを溜めるのは、子供にとってもあなたにとってもよくありません。
ストレスが溜まると子供にあたってしまったり、育児ノイローゼになってしまったりするからです。
子供がちゃんと食べてくれないと「料理がおいしくないのかな?」「味つけ失敗したかな?」と不安になることがありますが、ある程度「そんなもんだ」と割り切ることが必要です。
子供は「おいしい」「おいしくない」よりも、その時の気分や食感などで食べるか食べないかを決めています。
ですから、同じ料理でも食べたり食べてくれなかったりするのです。
「毎日の食事を作っているだけで私はえらい!」「一口でも食べたら子供もえらい!」
そうやって自分と子供を褒めながら、あなた自身が食事を楽しめるようにしていきましょう。
6.<まとめ>
偏食とは「好き嫌いの多さではなく栄養に偏りがある食事」ということ、偏食になる要因には「子供の気持ちが大きく関わっている」ということがわかっていただけたでしょうか。
「食べることは生きること」そういわれるくらい、食べることは大切です。
初めのうちは誰だって好き嫌いが多いものですから、焦らずに少しずつ「好き・おいしい」を増やしていきましょう。
そして、子供が「食」について考えられる大人になっていくために、健やかに成長できるように、栄養バランスを考えた食事を摂りサポートしましょう。
あなたの家庭の食卓に、いつも笑顔があふれているのなら、子供は食べることがどんどん好きになります。
ですから、子供と一緒に楽しい食卓をつくってくださいね。
【参考書籍】
・とけいじ 千絵『0~5歳 子どもの味覚の育て方』日東書院本社、2016
・加藤 初枝『好き嫌いをなくす幼児食―心に栄養、頭に栄養』女子栄養大学出版部 、2002
・上田 淳子 『うちの食べてくれない困ったちゃんが楽しく食べる子に変わる本』日本文芸社 、2016
・ひよこクラブ『初めての幼児食 最新版』ベネッセコーポレーション、2016
・田中 明、蒲池 桂子『たべることがめちゃくちゃ楽しくなる! 栄養素キャラクター図鑑』日本図書センター、2014